実験的歯の移動に伴う歯槽骨の改造過程 : 走査型電子顕微鏡による観察
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概要
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歯の移動に伴う歯槽骨壁の改造過程を観察する目的で, ラット上顎第一臼歯を約25gの力で近心方向に牽引し, 移動3時間後から1週間までに起こる歯槽骨壁表面の経時的形態変化を走査型電子顕微鏡で観察した.また, X線マイクロアナライザーを用い, 移動後の歯槽骨のCaとPの濃度分布の変化についても検討し, 以下に述べる結果を得た.1. 圧迫側では, 移動24時間後に歯槽骨壁表面に浅い吸収窩が認められ, その後, 次第に広く拡大していた(直接性骨吸収).しかし一部試料では, 硝子様変性に対応した歯槽骨を囲むように, 深い吸収窩からできた帯状の吸収領域も観察された(穿下性骨吸収).2. 牽引側では, 移動24時間後にほとんどの吸収窩の窩底表面は微細な石灰化基質に被覆されていた.その後, 吸収窩表面に顆粒状あるいは楕円体形の石灰化構造物が次第に沈着し, 移動1週間後には, ほとんど埋められた状態になった.3. 移動後牽引側に形成された新生骨は, 均一に石灰化程度が低く, 移動後急速に骨形成が起こったことが推察された.以上の結果より, 歯の移動により歯根膜に面した歯槽骨表層の広い範囲で急速に骨の改造が起こることが明らかになった.
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