歯科疾患予防管理を受けた成人における歯の喪失リスクの要因分析
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概要
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本研究の目的は10年以上継続して歯科疾患予防管理を受けた成人集団における歯の喪失に及ぼすリスク要因を特定すること,および喪失に至った歯の抜歯原因を明らかにすることである。対象は,新潟大学歯学部附属病院において歯科疾患予防管理を受けた663名(男性291名,女性372名:初診時の平均年齢37.6歳)である。リコール期間中に1歯以上の歯を喪失した者は269名(40.6%)であり,5歯以上の多数歯を喪失した者は47名(7.1%)であった。年齢や性などの基本属性・初診時の歯および歯周組織に関する各指標を説明変数,リコール期間中の喪失歯発生の有無を基準変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果から,未処置う蝕歯が多い者,クラウン装着歯(単冠)が多い者, 3mm以上の歯周ポケット保有歯率が高い者,歯石沈着度(VM-index)が高い者ほどリコール期間中に歯を喪失する傾向が高いことが示された。初診時に未処置う蝕のある歯とクラウンが装着されていた歯は,リコール期間中の喪失歯率が健全歯に比べて高く,カリエスリスクとう蝕罹患経験の影響が大きいことが示された。リコール期間中に5歯以上喪失した者を多数歯喪失者として,リコール期間中に歯を喪失した者に対象を限定し,喪失の多寡について多重ロジスティック回帰分析を行った結果,初診時の年齢が高い者ほどリコール期間中に多数歯を喪失する傾向が高いことが示された。喪失した歯の抜歯原因についてみると,歯周疾患に起因する割合(52.0%)がう蝕に起因する割合(40.2%)よりも若干高かった。多数歯喪失者における抜歯原因については,歯周疾患に起因する抜歯の割合(6.4.6%)がう蝕に起因する割合(32.3%)を大きく上回っており,多数歯喪失は歯周疾患リスクに起因していることが示唆された。
- 有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文
- 1998-10-30
著者
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