女子開咬患者における顎顔面形態の一世代間比較 : 咀嚼刺激と顎顔面形態の関係
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概要
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成長中の一定の時期に開咬を有し食物による咀嚼刺激が少なかったと考えられる女子と, 顎顔面形態の決定において遺伝学的背景に共通性が考えられるその母親の歯冠および顎顔面形態を比較することにより, 歯槽骨あるいは顎骨に対する咀嚼刺激の低下と顎骨の発育との関係について検討を行うことが本研究の目的である.研究対象は, 九州大学歯学部附属病院矯正科において開咬と診断された矯正患者のうち, 資料としての条件を満たした14歳以上の頭部X線規格写真を有する女子32名とその血族母親32名である.これらの上下歯列石膏模型を資料とし, 永久中切歯から第二大臼歯までの歯冠幅径および歯列弓ならびに歯槽基底弓の幅径と長径の計測を行った.また, 正面, 側面頭部X線規格写真の透写図上で, 23角度項目, 29距離項目, 13距離の比率項目を演算により求めた.これら計測値について, 親子間で有意差の検定を行い, 歯冠形態および顎顔面形態における親子間の比較を行い, 女子開咬者の特徴について次のような結果を得た.(1) 歯冠幅径については, 親よりも大きかった.(2) 歯列弓および歯槽基底弓については, 上顎に関して親と差はなく, 下顎に関しては親よりも大きかった.(3) 顎骨の大きさについては, 上顎に関して親と差はなく, 下顎に関しては下顎骨幅径および下顎枝高のみ親より小さかったが, 下顎長や下顎体長などはむしろ親より大きな傾向にあった.以上より, 開咬による咀嚼刺激の低下が, 必ずしも顎骨の発育の低下を招いてないことが示唆された.
- 日本矯正歯科学会の論文
著者
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村上 照男
九州大学歯学部歯科矯正学教室
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鈴木 陽
九州大学歯学部歯科矯正学講座
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中野 誠之
九州大学歯学部歯科矯正学講座
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松田 政登
九州大学歯学部歯科矯正学講座
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村上 照男
九州大学歯学部歯科矯正学講座
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