口腔内環境に適した超弾性型 Ti-Ni 合金ワイヤーの開発
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概要
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著者は, 前報において, 口腔内環境として, 口腔内温度, 歯の変位を設定し, その口腔内環境の変化に対する, 超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーの荷重の変化について検討した.その結果, 口腔内環境における本合金ワイヤーの荷重は, 温度上昇により高い値をとり, ワイヤーのたわみを, 歯の変位の相当量戻すことにより低い値をとることが示された.こうした荷重変化を小さくするためには, 荷重変化と最も関係があるとされるそのワイヤーの応力ヒステリシスを小さくすることが有効であると結論した.そこで本実験では, 応力ヒステリシスを小さくするための条件を検討し, 合わせて口腔内環境に適した矯正用ワイヤーを開発することを目的として行った.その結果, 以下の知見が得られた.1. 二段階の熱処理を行うことによって, 応力ヒステリシスを小さくすることが可能となった.特に, 600℃5分間, 280℃180分間の二段階熱処理を行った超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーは, 現在汎用されている超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーに比較して, 応力ヒステリシスが約80∿86%に小さくなった.2. 上記の条件の二段階熱処理を行ったワイヤーは, 現在汎用されている超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーに比較して, 口腔内環境の変化に対する荷重変化の範囲が約30%以内と非常に小さくなった.以上のことから, この二段階熱処理を行ったワイヤーは, 口腔内環境の変化に対しても, 良好な超弾性特性を有し, この環境に適したワイヤーであることが確認された.
- 日本矯正歯科学会の論文
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