ヒトラミニンα5鎖Gドノインのα-ジストログリカン結合ドメインの解析
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概要
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【目的】基底膜の主要成分であるラミニン(LN)は強い細胞接着活性を持つ。細胞側LNレセプターとしてはインテグリンとα-ジストログリカン(α-DG)が知られている。α-DGは筋組織においてLN-1、LN-2と結合し、筋細胞膜の安定化に寄与する一方、非筋組織ではLNとの相互作用を介して基底膜の構築に関わることが明らかにされている。しかし非筋組織ではLN-1、LN-2の発現が低く、他のLNアイソフォームがα-DGのリガンドとして働いている可能性が高い。現在までに12種類のLNアイソフォームが同定されているが、α5鎖を含むLN-10/11はその中でも成体内で最も幅広く発現していることが知られている。本研究ではLNの主要な細胞接着活性を担うGドメインに着目し、ヒトα5鎖Gドメイノを構成する5つのサブドメイン(LG1〜LG5)を遺伝子工学的に調製し、α-DG結合活性および細胞接着活性について検討した。【方法】ヒトα5鎖GドメインをコードするcDNAは、ヒト肺癌細胞A549からRT-PCRによりクローニングした。このcDNAを鋳型としてLG1〜LG5までの5個のサブドメインをGSTとの融合蛋白質として大腸菌で発現させ、グルタチオンカラムを用いて精製した。LG3は融合蛋白質が不溶性画分に回収されるため、8M尿素を用いて可溶化後、同様にして精製した。α-DGはウサギの骨格筋より精製したものを用いた。LG1〜LG5とα-DGの結合はELISAにより定量化した。細胞接着活性はヒト繊維肉腫HT1080を用いて測定した。【結果と考察】5個のサブドメインの中でLG4だけが強くα-DGに結合し、他のサブドメインは全く結合しなかった。また細胞接着活性もLG4のみに検出され、他のサブドメインには有意な接着活性は検出されなかった。しかし、このLG4の接着活性はインタクトなLN-10/11と比較すると非常に弱く、細胞の伸展も観察されないことから、インテグリンを介する活性ではないものと推定された。以上の結果は、LN-10/11への細胞接着においてLG4とα-DGの相互作用がインテグリンを介する接着システムの補助的な役割を担っていることを示している。
著者
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関口 清俊
大阪大学蛋白質研究所
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井戸 寛之
大阪大学蛋白質研究所化学構造部門
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長束 優子
大阪大学蛋白質研究所化学構造部門
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李 紹良
大阪大学蛋白質研究所化学構造部門
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Combs Ariana
ウィスコンシン大学生理学教室
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Ervasti James
ウィスコンシン大学生理学教室
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Combs Ariana
大阪大学蛋白質研究所 化学構造部門
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Ervasti James
ウィスコンシン大
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Combs Ariana
ウィスコンシン大
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