山羊における尿素の代謝回転と排泄について
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概要
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血液中の尿素は,腎を介して尿中に排泄されるが,一部は消化管に移行して,微生物によってアンモニアと二哉化炭素に代謝されることが知られている,また反劉動物の消化管,ことに反剥胃内の微生物によるアンモニアの利用は,動物の栄養に大きく関与するものと理解されている.本報では,14C一尿素をトレーサーに用い,摂取蛋白質量を異にする成山羊において,血液尿素の代謝回転量を調べるとともに,尿中ヘの尿素の排泄について観察した.観察結果を要約すると,次の通りである.I)静脈内に投与された14C一尿素は,1時間以内で体内にひとしく分布して,平衡に達するものと考えられる.それ以降は,時間の経過とともに,指数関数的に減少した.2)代謝回転による血液尿素の半減時間は1.5~3.6時間で,動物の摂取蛋白質量には影響されないと考えられた.3)動物体内に分布する尿素のスペースは,体重の40~50%に相当し,含まれる尿素量(プール尿素量)は,摂取蛋白質量の増減にしたがって増減した.4)単位時間当たりの尿素の代謝回転量を,プール尿素量と半減時間から求めた.その結果,代謝回転量は,摂取蛋白質量の増減にしたがって増減することがわかった.5)尿素の排泄量は,摂取蛋白質量の増減にしたがって増減した.単位時間当たりの尿素の排泄量は,代謝回転量の50%以下であった.血漿尿素濃度が0.02~0.03mg/mlに低下する低蛋白質飼養の条件下では,排泄量は,代謝回転量の3%に相当するまで低下した.6) 14C一尿素の排泄は,投与後24時間でほぼ完了した.14C一尿素の排泄量は,投与量の50%以下であった.低蛋白質飼養の条件下では,排泄量は,投与量の3~10%に相当するまで低下した.7)尿素の代謝回転は,尿への排泄と,反別胃をはじめとする消化管でおこる尿素の代謝に,原因するものと考えられる.代謝回転量一排泄量一消化管でおこる代謝量 と考えると,体重が14~25kgの山羊において,1日に消化管で代謝される尿素態窒素は,I-11gと計算された.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1971-08-25
著者
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