タイヌビエ種子の休眠と発芽 : 青酸カリの休眠覚醒機構
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概要
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タイヌビエ種子の青酸カリによる休眠覚醒作用の機構を明確にするため、休眠覚醒効果の最適濃度で処理した種子における呼吸、酸化還元酵素活性およびNAD(P)H量の変動を検討した。100mM青酸カリを処理した一次休眠種子は顕著にその発芽が促進されるが、肉眼的発芽は処理期間(48時間、30℃)内に起らず、水洗後、30℃の明条件下に置床したとき速かに起った(Figure 1).したがって、青酸カリによる発芽誘導効果は処理期間中にあるものと考えられた。この最大の休眠覚醒効果を示した100mM青酸カリ処理は種子の酸素吸収およびCytochrome c oxidase活性を顕著に阻害した(Figures 2、3-A)。また、青酸カリ処理された種子のalcohol dehydrogenase活性はこの発芽誘導期間中いったん減少するが、その後増大し、48時間の処理直後RQ値は3.6に達した(Figures 2、 3-C).一般に、種子発芽においてその稼動が前提条件であるとされているペントース・リン酸回路の律速酵素glucose-6-phosphate dehydrogeraseの活性は、青酸カリによる発芽誘導期に変化せず、むしろ水洗後肉眼的発芽とともに増大した(Figure 3-B)。しかし、発芽誘導期に興味ある変動を示した酵素はcatalaseおよびperoxidaseであり、青酸カリ処理によって前者は活性が顕著に抑制され、後者は促進された(Figures 3-D、 E).さらに、種子のNAD(P)H含量が水洗後有意に減少した(Table 1)。したがって、これらの実験結果は、HENDRICKS and TAYLORSON(1975)がAmaranthusとレタスにおけるthiourea、 nitrite、およびhydroxylamineの休眠覚醒作用の機作として提案した仮説を青酸カリによるタイヌビエ種子の休眠覚醒作用の機作に対しても適用できる可能性が示唆された。また、青酸カリ処理によって種子の好気呼吸がアルコール発酵系に転換され得ることは、前報で報告したように、幼根突出までの発芽初期におけるタイヌビエ種子のエネルギー生産系がアルコール発酵系であることと考え合せると興味深い。
- 日本雑草学会の論文
- 1988-10-31
著者
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