フロリダのホテイアオイにおける生産性に関する形質の変異性
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概要
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熱帯から温帯地域まで広く分布するホテイアオイ(Eichhornia crassipes(MART.)SOLMS)は、形態も種々なる様相を示している。一般に環境要因により形態は変化すると報告されているが報告例はいまだ少ない。従って、フロリダ州の繁茂地よりホテイアオイを採集し、同一環境条件下で一定期間栽培した後、主に生産性に関する形質について比較検討した。フロリダ州の主なる繁茂地19地域よりホテイアオイを採集し(Fig.1)、生産性に関する形質の測定に供した。その中には長花柱型が2地域で確認された(Table 1)。各クローンから選んだ1ラミートを、フロリダ大学附属センター圃場内の水槽にて同一条件下(5% Hoagland溶液)で栽培し、被度100%になった40日後および120日後に新しく得られた新形成株に対して、同項目の測定を行った。その結果、特に草高および葉面積において、採集直後のクローン間に幅広い差異が認められ、栽培日数の増加に伴い、その変異幅が小さくなる傾向が認められた(Table 2, Table 3)。一方、葉型に関しては、同様に採集直後に幅広い変異が認められたが、同一条件下で栽培後、最も変異幅が小さくなる形質であることが認められた(Fig.2)。また、栽培開始40日後の新形成株の草高、葉面積、葉身および葉柄の長さ/幅比および光合成能力を有する表面積は、強く母株の形態を維持していることが明らかになった。しかし、120日後には、その影響は徐々に緩和された(Table 4)。一方、栽培開始40日後、各クローンより1ラミートを選び同一条件下(10% Hoagland溶液)で4週間比較栽培した。その結果、供試株が採集直後の母株の形態をまだ維持していた為、乾物における相対生長率およびその倍加日数に幅広い範囲が生じた(Table 6)。また、4週間栽培した結果、生産性は供試株の乾物重および光合成能力を有する表面積と高い相関を示した。特に栽培期間中に形成された子株の生産性との相関が高く、世代が進むと共に相関係数は減じた(Table 5)。なお、新株形成数については、供試株の大きさ(乾物重)と全く相関が無かった(Fig.3)。以上の結果から、ホテイアオイの生産性に関する形質は同]環境条件下で生育させることにより同一化する傾向にあり、環境要因が外部形態の発現および生産性に大きく関与することが示唆されたが、新形成株は母株の形態をある一定期間は維持することも明らかになった。なお、長花柱型と中花柱型とは形態および生産性に差異は生じなかったが、長期間の同一栽培条件下でも強く母株の形態を維持しているクローンが認められた為、さらに詳細な検討を要する。
- 日本雑草学会の論文
- 1989-08-30
著者
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