異なった生育地におけるエゾノギシギシの芽ばえの生存と開花について
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概要
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エゾノギシギシは人工草地において最も防除が困難な雑草であり、野外でのその芽ばえの動態を知ることは、防除法を確立するために、重要であると考えられる。東北大学農学部付属農場内の放牧地、採草地、林縁及び裸地に生育している根際直径1〜3 mmのエゾノギシギシの芽ばえに標識し、その芽ばえの根際直径、葉数、草丈、葉の昆虫による食害の有無及び標識個体の回りの裸地率を記録した。これらの調査を標識個体について、冬期間を除いて、1981年10月から、1982年10月までの一年間、毎月行った。1982年4月に標識個体とは別に、そこに生育しているエゾノギシギシの幼植物を掘取り、また最終調査月である10月に、生存していた標識個体をすべて掘取った。これらの個体を・葉身・葉柄・根に分けて葉面積と乾物重を測定した。各調査地の土壌水分と相対照度を4月から10月にかけて、毎月測定した。得られた結果は次の通りである。(1)乾物重の根への分配率は各生育地において秋に増加した。また林縁個体群において、Specific Leaf Area(葉面積/葉重)が著しく増加し、これは耐陰性の獲得につながると考えられた(Fig. 2, Table 1)。(2)林縁個体群は最も個体数の変化が小さかった。裸地個体群では、冬期問における枯死が多いが、春から秋にかけては、林縁と同様ゆるやかに減少した。これにたいして、放牧地と採草地個体群では、調査期間を通じて、ほぼ一定の割合で個体数は減少した(Fig. 3)。(3)冬期間の枯死率は、林縁を除いて裸地率が高い場所ほど高く、枯死の直接的な要因は凍上によるものであった(Table 3)。(4)春から秋にかけての枯死率は放牧地と採草地の2カ所で高く、放牧や刈取りによる地表面のかく乱が、枯死の要因と考えられた。(Table 4)。(5)葉の昆虫による摂食の程度は、裸地個体群において、最も高く、林縁個体群で低かったが、摂食が枯死の直接的な要因とはなっていなかった(Fig. 5)。(6)開花率は裸地個体群で最も高く、以下、採草地、放牧地、林縁の順であった。また、開花率は相対照度の高い調査地で高かった(Table 3, Fig. 4)。(7)放牧地、採草地、林縁の自然個体群では、芽ばえの生存率が高い生育地で開花率が低く、生存率が低い生育地で開花率が高い傾向がみとめられた。
- 日本雑草学会の論文
- 1984-09-27
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