土壌溶液中チオベンカーブ濃度に及ぼす土壌水分の影響

概要

論文の詳細を見る
観音台畑土壌(淡色黒ボク土)を供試し, チオベンカーブ[S-(4-chlorobenzyl) diethylthiocarbamate]の土壌溶液中濃度に及ぼす水分条件の影響について検討した。乾土当り同量になるように本剤の水溶液を加え, 所定の含水比(35, 45, 55, 65%および75%)に調整した。薬剤処理24時間後, 二重遠心管を用いた遠心分離法により土壌溶液(遠心水)および残査土壌(遠心土)に分け, 本剤の定量を行った。また, 採取した土壌溶液を用いメヒシバ(Digitaria ciliaris Koeler)およびヒメイヌビエ(Echinochloa crus-galli Beauv. var. praticola Ohwi)に対する生育阻害反応を調べた。1) 全ての処理薬量および水分条件において, 土壌溶液中における本剤の存在量は処理薬量および含水比が高くなるに伴い増加した(Fig. 1)。また, チオベンカーブの淡色黒ボク士における分配係数(土壌中濃度/土壌溶液中濃度)は, 処理薬量と反比例の関係を示した(Table 1)。2) 土壌溶液中における薬剤濃度は, いずれの処理薬量においても45〜75%の範囲ではほぼ一定であった。但し, 35%における薬剤濃度は他の条件に比べ高かった(Fig. 2)。3) 異なる水分条件(45〜75%)においてチオベンカーブ処理土壌から採取した土壌溶液を用いた生物検定では, メヒシバ, ヒメイヌビエともに含水比にかかわらずほぼ同程度の生育阻害が見られ, ここでも土壌溶液中薬剤濃度は含水比の影響をほとんど受けないことが確かめられた(Table 2)。一方, 水分条件(55%)を一定にした場合, 採取した土壌溶液における供試植物の生育抑制効果は処理薬量の増加に伴い高まった(Table 3)。また, この結果は, 直接調製した本剤の水溶液における生育抑制反応と一致したことから, 薬剤の大部分は残査土壌で検出されるものの, 殺草活性発現は土壌溶液中における薬剤濃度と密接に関連することが示された。以上のことから, 土壌溶液中におけるチオベンカーブ濃度は含水比が異なってもほぼ一定に保持されていることが明らかになった。
日本雑草学会の論文
1997-01-31

土壌溶液中チオベンカーブ濃度に及ぼす土壌水分の影響

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク