馬伝染性貧血の Ferrokinetics について
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概要
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私たちは, 馬伝染性貧血の発熱時には, 血清鉄が減少するが, 総血清鉄結合能は変わらないこと, 肝・脾の貯蔵鉄量が健康時とは逆になって, 肝の鉄量が脾の鉄量より多くなること, 循環赤血球量が減少すること, 赤血球の寿命が短縮することなどを認め, 特に貧血が赤血球破壊の増加に原因することを報告した. しかし, 貧血は赤血球の産生と破壊の両面から考えられるべきである. 今回, 骨髄造血能を知る目的で, 放射性鉄を用い, 血清鉄ならびに赤血球鉄の代謝回転を測定した. この実験では, in vitroで血漿に結合させた^<59>Feの一定量を静脈内に注射して, その放射活性の半分が循環血漿中から消失する時間(T1/2)を測定することによって, 24時間に血漿中に出入する鉄量, すなわち血清鉄の代謝回転率(PITR)を求めた. 次にこの消失した^<59>Feが, 骨髄で赤血球中のヘモグロビン鉄に生合成され, ふたたび流血中にあらわれる活性を測定して, 赤血球の^<59>Fe利用率および赤血球鉄の代謝回転率を求めることによって, 定量的に骨髄造血能を判定した. 従来種々の動物で測定されたT1/2およびPITRの値を示すと, 牛では1.82時間で0.81mg/kg/day(以下, 単位を省略する), 緬羊では1.57時間で0.56, 豚では1.19時間で1.11, 人では1.7時間で0.54である. 馬での成績はない. この実験での健康値は, 生後6カ月の馬で0.86時間と0.65, 生後11カ月の馬で1.48時間と0.55であった. 赤血球の^<59>Fe利用率は76%で, 約10日でその極大値に達し, 他の動物と同様な成績を示した. ヘモグロビン鉄の1日代謝量は, 総ヘモグロビン鉄の1.49%で, この逆数, すなわち赤血球寿命は約70日であった. 伝貧馬では, 種々の病的時期に測定した. 発熱時には血清鉄のT1/2は短縮し, その代謝回転率は増加した. しかし赤血球の鉄利用率は27%, 40%等と減少し, 赤血球鉄の代謝回転も1/2ないし1/3に減少した. このことは明かに骨髄造血能の減退を意味している. 一方, 無熱時には, これらT1/2, PITRおよび赤血球の鉄利用は, 健康値に近い値を示した. また無熱時で赤血球数が急速に回復しつつあった1例では, 赤血球の鉄利用は, 健康値あるいはそれ以上を示した. 伝貧馬骨髄の形態学的な研究は数多くあるが, 貧血との関係について明確な結論はなされていない. 石井らは, 穿刺骨髄液で有核赤血球数の総有核細胞数に対する比が, 発熱時減少することを観察している. 本実験によって, 伝貧馬の赤血球産生は, 少なくとも熱発作期に減退し, 貧血は一部この骨髄造血機能の低下に基づくことを確認し得たものと考える.
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