牛乳のカルシウム結合タンパク質の精製ならびにその性質
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概要
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泌乳期の乳牛の乳腺におけるCa代謝を解明するために, Sephadex G-100ならびにG-75カラムを用いるゲル濾過法およびDEAE Sephadex A-25イオン交換クロマトグラフィーによって牛乳から2種類のCaBP(mCaBP-3, mCa-BP-4)を分離, 精製し, その物理化学的ならびに免疫学的性質を観察した. また, ウシ小腸粘膜に存在するD依存性CaBPの性状と比較検討した. 精製mcaBP-3ならびにmCaBP-4は, 7.5%ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動においていずれも1本のバンドとして観察され, その易動度は0.73であった. また, 2つの牛乳CaBPはCaの存在下に電気泳動すると, その易動度は陰極側へと大きく変化した. 2つの牛乳CaBPの分子量はゲル濾過法ならびにSDSディスク電気泳動法によって推定したところ, いずれも約15,000であった. 2つの牛乳CaBPのリガンド特異性は, Ca≫SrZnCdMnMgの順であり, Caと特異的に結合することが観察された. さらに, 2つの牛乳CaBPはCaに対して2相性の結合様相を示し, 親和性が強く(Kd≑4×10<-6>M), 結合容量の小さい結合部位(n=1)と, 親和性が弱く(Kd=1.5×10<-4>M)結合容量の大きい結合部位(n=4〜5)の2つを持っていた. また, 2つの牛乳CaBPともプロナーゼならびにノィラミニダーゼ処理によってそのCa結合能は約95%消失し, トリプシン処理によっても約70%のCa結合能の消失が観察された. しかしトリプシン処理に先だって1 mMのCaCl_2と反応させた場合には, Ca結合能は消失しなかった. 2つの牛乳CaBPとも加熱処理によってそのCa結合能はほとんど影響を受けなかった. 一方, ウサギ抗mCaBP-3抗血清を用いる2重拡散法において, mCaBP-3はmCaBP-4と免疫学的に同一の抗原性を示した. しかし, ウシ小腸粘膜粗CaBPとは免疫学的交差性は観察されなかった. 以上の結果から, 牛乳中にはD依存性CaBPと類似した性質を持つCaBPの存在することが明らかにされた. しかしながら, このものはウシ小腸粘膜CaBPとは異なるものと思われる. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 終始懇篤なる御指導を賜わりました東京大学医学部保健栄養学教室 細谷憲政教授に深謝致します. 本論文の要旨はThe third international symposium on calcium-binding proteins and calcium function in health and disease (Wisconsin Center, 1980), 第90回日本獣医学会(山口, 1980)で報告した.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1981-08-25
著者
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