高層建築物に作用する風圧力について : 早稲田大学 51 号館における実測をもとにして
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概要
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以上の結果を, 風速・速度圧と風圧の波形の例(Fig.16)と合わせてまとめを行う。速度圧(V.P.と表示)はpV^2/2, p=1/8kg・s^2/m^4より換算したものである。風上面の風圧は, 速度圧の変動と非常に良く対応して変動している。このことは, 変動風圧の確率分布が風圧と速度圧の線型関係を仮定して導いた分布と良く適合することや, 平均風圧係数・最大瞬間風圧係数・変動風圧係数いずれも17, 14階中央部で最大値1.0, 0.9, 0.4をとり, それらの分布に一応の相似性のあることに現われている。また, 端部を含めて各測定点の風圧変動は, 包絡的にはかなりの程度まで似かよっており, 風上面の風圧変動や相関性は極めて大きい。ルートコヒーレンス=exp(-k・nD/V)と表わすとK≒3となり, 風速に対する既知の値よりもかなり小さな値を示す。しかし, 中央部で14, 11, 9階と壁面中心部に近づくにつれ, 速度圧変動に見られる細かい変動が消失しており, パワー・スペクトル密度はいずれも, 高周波数域では周波数の指数関数的に減ずるが, その指数は周辺部から中心部に至るにつれ, 5/3から9/3に増大することと対応している。風速変動から風圧変動への変換の過程で, 高周波数域のエネルギーが失なわれることを意味しており, 結果的に, 中心部において乱れの変換率を低下させることになる。端部では, 中央部の変動には見られない, かなり短周期の変動が含まれており, パワー・スペクトルの高周波数域での減衰が緩やかであることに対応している。しかし, これらの変動は端部の各測定点では共通性があるが, 速度圧変動との共通性は少なく, 建物面で生じた端部に固有の変動であると考えられる。また, 全面にわたって風圧変動がピークをとるのは, 風速変動が長周期成分を含んだ持続性のあるピークをとる時であり, 風速変動のピークが瞬時で終る時には全面的にはピークを生じないようである。このことが, 乱れの変換率が低下するにも拘らず, 最大瞬間風圧係数が平均風圧係数とほぼ等しくなる理由であろうと考えられる。一方, 風下面(Fig.16には風上面の4倍の縮尺で示した)では, 風圧変動と風速あるいは速度圧変動との対応はほとんど無い。しかし, 風速変動がピークになる時, 風圧の変動が大きくなり, その中でピークを示す様子が見られる。これが, 変動風圧と平均速度圧, 最大瞬間風圧と最大瞬間速度圧の対応として現われている。端部・中央部の各々には, ある程度の風圧変動の共通性が見られるが, 端部と中央部の風圧変動の間には余り共通性が存在せず, 風上面よりも風圧変動の相関性が弱く, 前記のkは風上面の2倍弱である。中心部の風圧変動が特異で, 正圧側に鋭いピークを有する。微弱ながらも逆流現象が生じているものと考えられる。いずれにしても, 風下面では, 平均風圧がほぼ0であるだけでなく, 変動風圧係数も0.1以下であり, 風圧の変動も全面的に極めて小さいことが特徴である。
- 社団法人日本建築学会の論文
- 1981-01-30
著者
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