山地傾斜地のおける放牧地の標高および斜面が夏季放牧牛群の食草, 休息時の牧区内分布に及ぼす影響
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概要
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山地傾斜地における放牧地の地形が牛群の食草および休息時の牧区内分布に及ぼす影響を検討する目的で, 夏季放牧期間中(7月-9月)、5頭のホルスタイン種育成牛と32頭のヘレフォード種育成牛からなる牛群を、標高差が約60m(標高150-214m)で面積9.8haの牧区に放牧し、24時間の行動観察を計6回行った。牧区内各標高別区域および樹林地、谷、平坦部や斜面の方角に基づき分類した6つの小区画における食草および休息時間を、各行動の総時間に対する割合として算出し、面積比に基づく期待値との差をそれぞれX^2検定により検定した。この時、牛群の食草、休息行動の日内変化に基づき、1日を昼間(8-16 : 00)と夜間(20-4 : 00)および朝夕(4-8 : 00、16-20 : 00)の3つに分類し、解析を行った。得られた結果は次の通りである。1)標高ごとの各行動時間では、昼間の食草時間の63.5%、休息時間の79.4%が牧区内低標高区域(160-170m)で観察され、夜間の食草時間の67.9%、休息時間の75.9%が牧区内高標高区域(190-210m)で観察された。1日全体での食草時間は特定の標高別区域に偏ることはなかった。2)小区画ごとの各行動時間では、昼間の休息時間は南向き斜面(38.8%)と平坦部(51.0%)に有意(P<0.01)に偏った。昼間の食草時間の割合は南向き斜面、東向き斜面および平坦部で47.9、21.3、22.9%であり、南向き斜面の47.9%は期待値よりも有意(P<0.01)に高かった。1日全体での食草時間は、いずれの時間帯にも食草行動が行われなかった樹林地を除き、特定の小区画に偏ることはなかった。3)各小区画における総食草時間と積算放牧地草現存量から、全観察を通しての放牧地草現存量1kgDM当たりの食草時間を小区画ごとに算出した結果、現存量1kgDM当たりの食草時間は平坦部が他の小区画よりもやや低い傾向にあったが、期待値と比べて有意な偏りではなかった。日本家畜管理研究会誌、29(2) : 61-68.1993.1993年6月24日受理
- 日本家畜管理学会の論文
- 1993-11-10
著者
-
近藤 誠司
北大FSC
-
朝日田 康司
北海道大学農学部
-
朝日田 康司
北大農
-
安江 健
茨城大学農学部
-
近藤 誠司
北海道大学大学院 農学研究院家畜生産学分野
-
大久保 正彦
北海道大学
-
安江 健
北海道大学農学部
-
近藤 誠司
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
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