寒冷地における生物脱臭材の適合性
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概要
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脱臭に関する微生物の最適温度は20〜30℃前後で、10℃以下の環境条件になると微生物の活性とくに硝化能力が低下し、これに伴って脱臭能力が減退すると考えられている。最近開発されたロックウール脱臭材を用いた脱臭装置は、脱臭能力や経済性で優れていることが既に立証されているが、寒冷地域における冬期間の性能については明らかにされていない。そこで、冬季の外気温が零下15℃前後に低下する青森県十和田市にある北里大学獣医畜産学部内農場にロックウール脱臭装置を設置し、稼働中における装置内温度、通気抵抗、微生物数などの変化を測定するとともに、送入したアンモニアの除去状況から低温期における脱臭能力の性状と問題点を検討した。試験結果の概要は次のとおりであった。(1)装置設置場所の期間中の日平均気温は、12月から零下を記録するようになり、1月は月の半分が、また2月はほとんどの日が零下となった。最低気温は1月に一11.7℃、2月には一14.5℃を記録した。積雪は12月から1月は7〜15cm、2〜3月は最高30cmであった。(2)装置内温度は、外気温の変化よりやや遅れて変動した。外気温が夜間に0℃以下になっても日中に7〜8℃に上昇する時期には、装置の中心部温度は12〜13℃に保たれていたが、装置上部では10℃を割ることが多かった。日中も零下の気温が続くようになった2〜3月中旬にかけては、装置内は中心部でも6〜8℃、上部では4〜8℃、ときには零下を記録した場合もある。(3)アンモニアの除去状況については、アンモニアガスボンベから100ppmになるように流量を調節して作成したアンモニア混合空気を2.8m3/分の風速で装置内に送入し、排気口で検知管を用いて測定した。その結果、試験開始当初の12月〜1月のアンモニア除去率は低かったが、寒さの厳しくなった2月以降は安定した。2月以降のアンモニア除去率は、散去を行なって脱臭材料中の水分を60%程度に保った状態ではほぼ100%除去されていたが、散水前の水分含量が50%前後の稼働状態のときは、平均して96%の除去率であった、(4)脱臭槽の床下静圧は、槽内下部3箇所の平均が散水前には32mm、散水後は57mmと大きな差が認められた、(5)微生物は、脱臭槽内温度が10℃以下となった2月下旬には亜硝酸酸化細菌の菌数が減少したが、アンモニア酸化細菌は寒冷時期も減少せずに増殖を続けた。脱窒素細菌および一般細菌の菌数はあまり変化しなかった。以上の結果から、本装置は冬季の外気温が一15℃程度に下がる地域においても、内部材料の凍結や細菌数の減少による脱臭性能の低下は起こらない事が明らかとなった。しかしながら、用いた脱臭材の保水性が悪かったため、しばしば散水を行なう必要があったので、保水性のよい材質への転換あるいは散水の自動化などの対策が求められるものと思われた。日本家畜管理研究会誌、28(3) : 97-104.1993.1992年7月15日受理
- 1993-02-10
著者
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市川 忠雄
北里大学獣医畜産学部
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市川 意子
筑波大学医療技術短大部
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福森 功
生物系産業技術研究推進機構(農業機械化研究所)
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野附 巌
東京農工大学農学部
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野附 巌
全国酪農協同組合連合会
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市川 意子
筑波大学医療技術短期大学部
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