牛の行動による色覚検査
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概要
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牛と人の電気生理学的反応の類似性に基づき、牛にも人と同じ色覚メカニズムが存在すると仮定し、色覚異常の場合には識別が困難な色パネルの組合せを用いて、2者択一の識別学習手続きにより、ホルスタイン種育成牛の色覚検査を実施した。試験には生後約5ヶ月齢のホルスタイン種育成雌牛4頭を用い、野外に設置した迷路型の識別学習装置の左右にランダムに配置した赤と白の色パネルの赤側を報酬側として選択するよう予備訓練した。予備訓練は1セッション12試行とし、供試牛が赤側の識別を学習するまで続けた。識別学習の成立は、牛が12試行中10試行以上報酬側を選択することを基準に判断した。また、訓練の初期に牛が片側への位置偏好を示したので、位置偏好修正訓練を考案し、実施した。予備訓練の後、色覚異常の場合には識別が困難な赤と青緑(第1異常)、赤紫と緑(第2異常)、青と緑(第3異常)の3組の色パネルを用いて、それぞれ前者を報酬側とする識別学習(本試験)を順に10セッションづつ実施した。試行のやり方ならびに識別学習成立の判断は、予備訓練と同様に行った。さらに、本試験期間中に報酬側の識別が学習されなかった色の組合せについては、それが真に色パネル間の識別困難によるものかどうかを追試験により確認した。追試験では、本試験期における牛毎の学習状況に応じて、試験期間の延長あるいは位置偏好修正訓練の導入を行った。その結果、赤と青緑の組合せでは、本試験期間中に、すべての供試牛赤側の識別学習を成立させた。赤紫と緑の組合せでは、逆に、すべての供試牛が本試験の10セッションでは赤紫側の識別学習を成立できなかったが、しかし、追試験期には、すべての牛が赤紫側の識別学習を成立させることができた。青と緑の組合せでは、1頭の供試牛しか本試験期間中に青側の識別学習を成立することができなかったが、追試験によって他の3頭もすべて青側の識別学習を成立させた。したがって、ホルスタイン種牛が人と同じ色覚メカニズムを有するならば、その色覚は正常な3色型であることが示唆された。 日本家畜管理研究会誌、27(2) : 57-63.1991. 1991年5月24日受理
- 日本家畜管理学会の論文
- 1991-09-17
著者
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