広島県下の或鷄舍から発生したハエの季節的様相
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概要
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1956年4月から1カ年にわたつて, 広島県下の一半農半住地に於て, 鶏舎から発生するハエの種類及びその季節的な消長を調査したが, その結果8科, 11属, 15種のハエが得られた.年間の発生量からは, Tephrochlamys sp., Fannia sp. I, Fannia sp. II, コウカアブのような, 衛生害虫としては比較的意義の少い種類が圧倒的に多かつた.そして, コウカアブを除いては, 体も小さく, 発生量の割には目立たないものである.発生量としては前群に及ばないが, サシバエ, ヒメクロバエ, オオクロバエ, イエバエ, センチニクバエ, オオイエバエ, ヒメイエバエなどの, 衛生害虫として重要な種類が多種発生する事が注目された.これは, キンバエ類を除いて, 衛生上重要と考えられる種類を含む殆どすべての科属にわたるもので, 同じ家畜系列の発生源である牛・馬・豚舎などと比較してみると, 豚舎の性格に類似している.この事は, 恐らく家畜の食性に起因するもので, 動物性, 植物性の混合飼料をとる鶏では, 主に草食性の牛馬よりも, 雑食性の豚に似たものであろう.Silverly, R. E. & Schoof, H. F. (1955a, b, c)によると, アメリカの市街地で, 一番重要なハエの発生源は鶏舎であると報告している.これによると, 発生種の69%はMusca domesticaで, 18.8%がMuscina spp.である.緒方ら(1957a)の報告も加えて考察すると, 鶏の飼養管理上有利なバタリー式の鶏舎構造が, 土間式に比べて, ハエの発生に有利になつている事実をも追加しておきたい.土間式では, 鶏がハエ幼虫を捕食する事の他, 糞の物理的状態が関与するものと考えられる.鶏舎の場合も, 家畜系列発生源の特徴として, イエバエ科, ヒメイエバエ科及びこの近似科の種類を多発させている事である.特に, 鶏を吸血する事は少いと考えられるサシバエを大量発生させている事は興味深い.キンバエ類が何故発生しないものか, その機構については非常に興味がもたれる.Tephrochlamys sp.やFannia sp. IIが, 早春, 晩秋に大量発生したが, 衛生上の重要種は5〜9月の期間に発生する.この資料から, 鶏舎対策の適期が自ら判断されるが, 対種防除という点からは, 本地方では, 5.7・8・9月が特に重要と考えられる.
- 1958-04-10
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