ミナミマルツチカメムシの生態 : II. 大飛来とその誘発要因について
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概要
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家屋の灯火に飛来し, 人の耳に侵入して多数の耳疾患者を発生させたミナミマルツチカメムシについて, 1975年夏, 沖永良部島における飛来状況を観察し, その誘発要因の解析を試みた。成虫の飛来は誘殺灯火に設置した直径30cmの水盤の中に, 5分間で100匹近く落下するほどの規模で起ったが, これは飛来時間の風速が3.3m/sec以下の日に限られていた。これは成虫の飛び立ち行動が, 風によって抑制されるためと考えられた。本種はふだん土壌中に生息するが, 室内観察の結果, 成虫は日入時刻頃から夜半にかけて土壌中から這い出し, 歩行活動した。また灯火に対する飛来開始時刻は, 日暮時刻と正確に一致しており, 夜半まで飛来が続いた。これらから飛翔活動の日周期性は, 1日1山の夜行型に近いものであり, 薄暮期の照度の変化が重要な要因となっているものと考えられた。灯火にはオス, メスどちらも飛来した。メス成虫の内部生殖器を剖検したところ, 卵巣発育のいろいろな段階の個体が混在しており, 飛来行動は直接生殖的意義をもつものではないと考えられる。しかし成虫に餌を与えずに飼育すると, 与えた場合より地上部這い出し個体が多くなり, 飛翔は, 一つには摂食に関係したものであると推測された。前報に
- 1976-09-15
著者
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栗原 毅
帝京大学医学部寄生虫学教室
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江下 優樹
帝京大学医学部寄生虫学教室
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池本 孝哉
帝京大学医学部
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高井 鐐二
鹿児島県徳之島保健所:徳之島地区ハブ対協
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山口 徹磨
鹿児島県徳之島保健所:(現)鹿児島県加世田保健所
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