合成幼若ホルモン, methoprene および hydroprene のコロモジラミならびにトコジラミに対する殺卵効果について
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概要
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最近, 幼若ホルモン活性が高く新らしい殺虫剤として注目されているmethopreneおよび, hydropreneのコロモジラミ, ならびにトコジラミに対する胚発育抑制効果を調べた。methopreneおよびhydropreneをそれぞれ7倍量の落花生油で希釈し, 必要濃度にアセトンで展開した。トコジラミは吸血1日後に30頭の終令幼虫を必要濃度浸み込ませた木綿布に放し, 5日後に木綿布に産卵された卵数を顕微鏡を用いて記録した。実験中5日おきにhairless miceで吸血をさせた。コロモジラミは成虫化直後の雌雄各25頭をそれぞれ必要濃度浸み込ませた木綿布に放し, トコジラミと同様に25℃の孵卵器中で, また, それぞれの卵は30℃の孵卵器中にて飼育した。コロモジラミの胚に対しmethopreneのLD 50値はおおむね18.0μg/(cm)^2が得られた。hydropreneは, methopreneよりもさらにコロモジラミ胚に対して強力な効果を示し, 5μg/(cm)^3でも50%以上の致死率が得られ, LD 50値は4.25μg/(cm)^2という結果を得た。一方, トコジラミの胚に対する効果はコロモジラミ胚に対する効果と全く逆の結果が得られた。すなわち, hydropreneにおいては, 100μg/(cm)^2でも目立った効果はみられなかったが, methopreneに対して12.5μg/(cm)^2で50%以上の致死率が得られ, LD 50値は7.25μg/(cm)^2であった。以上の結果から, 今回実験に用いた2種類の合成幼若ホルモンにおいて, 2種類の昆虫に対し, 明らかに異なった結果が得られたことは, 従来, 各種の昆虫に対していわれている合成幼若ホルモンの昆虫に対する種特異性がみられた。最近, methopreneの各種完全変態衛生害虫に対する効果が多く報告されているが, チャバネゴキブリのpopulation抑制にhydropreneが効果を示す報告もあり, これらが不完全変態衛生害虫の駆除にも殺虫剤として利用できる可能性があろう。
- 1975-12-15
著者
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