キャッシュフロー・ベースによる研究開発投資の効率評価の方法論に係る考察
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概要
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キャッシュフロー・ベースでの経営評価が重視されてきている中で,研究開発投資についても,キャッシュフロー・ベースでの効率評価の方法論が必要となっていると考えられる。本稿においては,(1)キャッシュフロー・ベースでの事業価値を評価する方法論と研究開発投資との関連に係る考察を行い,理論的な経済付加価値率と研究開発投資との関係について概ね一次相関があるとの分析を行った上で,(2)研究開発費営業利益率を用いた場合の相関性の度合いとその限界について考察した結果,研究開発費の高い企業に係る同指標は売上高研究開発費率に比べて高い相関性を有することが判明した。他方,複数年次にわたる分析を行うためには一定の限界があり,これを補足するためには,研究開発投資が生み出す利益と投資規模を表現する観点から,「パフォーマンス・スケール・チャート法」を用いることが有効である。本稿では,これを適用し,情報通信産業と医薬品産業における例示的分析を試みた。(3)最後に,キャッシュフロー・ベースでの研究開発投資効率を重視した場合には,技術開発成果があっても開発企業自身による事業化投資を行っていない場合の対処方針が課題になる。この場合,金融工学におけるリアルオプションの考え方を用いた考察により,スピンアウトによる社外ベンチャーを促進することで,将来の選択肢(オプション)を得ることが,合理的な行動である場合があることが示された。
- 2004-07-10