日本の民間研究助成の現状と問題点 : 文部省科研費との関係を中心として
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概要
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公的セクターが行う研究助成の代表的存在である文部省科研費は、規模では民間助成財団による研究助成を圧倒する。しかしながら助成財団は、「ノンプロフィットセクター」としての特性を生かすことで、助成の性格や助成対象などの点で科研費の持つ短所を補うべく、助成を行うことができる筈である。そこで本論文では、民間助成受領研究者の属性として、所属する大学、研究分野、職階および科研費受領状況という4項目のデータに基づき、特に科研費受領パターンとの対比において、民間助成の配分状況についての実証的分析を行った。結果の概要は次の通りである。民間助成は、助成件数、助成金額共に科研費と比べて極めて小さい規模にとどまっている。ノンプロフィットセクターとしての特徴を十分に生かすためにも、何より助成規模の量的拡大が今後の最大の課題である。民間助成は、科研費と同様、件数、金額共に、大学では旧帝大グループ、分野では自然科学、特に理学や医学分野に対して重点的に配分されている。また、職階では、特に医学分野などで教授に偏った配分が行われている。全般的な傾向としては、民間助成は科研費受領者に対して重点的に助成を行っており、特に自然科学分野では、科研費の補助的役割、それも量的には科研費の十分の一程度の追加的補助にとどまっているのである。しかしながら、民間助成全体の中では少数派である私立大学や人文社会科学分野の若手を対象とする助成では、科研費の受領経験を持たない研究者に対する配分も少なからず行われている。また、科研費受領者を避けるような助成配分も、リスクの小さいうちは、積極的に行われている。今後の課題としては、配分された助成の結果だけではなく審査、選考課程をとりあげ政策的観点からの検討を行うことや、助成終了後の研究成果に対する評価方法を確立することなどがあげられる。
- 研究・技術計画学会の論文
- 1992-10-15
著者
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