東亜羊歯植物考察V.
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概要
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リウキウキジノヲ(新称)本種は1923年に琉球西表島で小泉博士の発見せられたものである.裸葉は長さ約30-50cm,葉片は卵状被針形,羽片は被針形で尾状鋭尖頭,基脚上側は鋭尖形,下側は鋭形乃至楔形,下方の羽片には5mm.ばかりの柄があるが,上方のものは無柄,辺線の鋸歯は基部のものほど小形鈍頭で不顕著になり,先端に近づけば漸次大形鈍頭で疎に並び且つ多少内曲する.葉片の先端部はタカサゴキジノヲとキジノヲシダとの中間型を示す.実葉は裸葉よりはるかに短く且つ繊細である.他に比較すべきものもない一新種であるから,発見者に因んで学名をPlagiogyria Koidzumi TAGAWAとした.シシホシダ(宇井)とイヨホシダ(小泉)ホシダの葉片の先端と羽片の先端とが獅子状に分裂した一品が紀伊国牟婁郡上秋津村の山地にある.中島涛三,北島脩一両氏の発見で,宇井縫蔵氏がシシホシダと仮称せられたものである.学名をDryopteris acuminata NAKAI f. cristata TAGAWAと新称する.イヨホシダはホシダに比するに葉の幅が廣くて卵状被針形をなし,最下羽片が羽状複生をなすもので,Dryopteris Ogarana KOIDZUMIと命名されたものであるが,この最下羽片が羽状複生をなすという形質は安定なものでなく,同一の株から然らざる葉も出るようである,然し葉の幅の廣いという形質は一定しているから,ホシダの一変種として学名をDryopteris acuminata NAKAI var. Ogatana(KOIDZUMI) TAGAWAと改めよう.伊像国南宇和郡御荘村字和口の産で,緒方松蔵氏の発見にかかるものである.ツクシイハヘゴ(新称)肥後国阿蘇北向山にイハヘゴとオホクジャクシダとヲクマワラビと三つの性質を兼備えた一羊歯がある.〓堆が羽片中肋の両側に不規則に散在するところはイハヘゴに似ているが,包膜は胞子が成熟する以前に萎縮するから胞子の飛散する頃には胞子嚢の中に埋れている.この点はヲクマワラビに似ている.鱗片はイハヘゴほどに黒くはなく,オホクジャクシダの如く褐色でもない.羽片の形状はイハヘゴに似ているが,切込みの模様はオホクジャクシダとヲクマワラビとの中間型を示している.葉脈の模様はオホクジャクシダに一致する.これら三種の雑種かどうかは決定不可能であるから,新種として学名をDryopteris commixta TAGAWAと定めた.田代善太郎氏の採集にかかるものである.
- 1933-09-01