慢性工業中毒指標としての血清Sialic Acidの評価に関する実験的研究
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概要
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(1) 血清sialic acidの工業慢性中毒指標としての有用性を,工業毒物の内,互に生体への障害部位を異にする一方生体内での代謝および排泄速度に著るしい差異が認められないと予想される四塩化炭素,二硫化炭素およびacrylonitrileをもちいて投与毒物に対する反応の鋭敏性および変動の定量性の二点より検討した。 名毒物共血清sialic acidの中毒群平均値は投与開始後1&2週間以内に対照群平均値95%信頼限度を超える著明かつ安定した上昇を示し,変動出現の時期は従来これらの慢性中毒指標として用いられてきたhematocritおよびhemoglobin等血液性状あるいは体重増加と比較してより早期であった。またそのさいの血清sialic acidは,各群共,累積投与量の平方根に対して直線的に増加することが認められた。 (2) さらに血清sialic acidの変動の毒物投与によるbody burdenに対する定量性が,累積投与量を各々の相対的毒性の強度で標準化した値の平方根に対する直線性より明らかになり,血清sialic acidが中毒状態における生体のimpairmentを定量的に評価する可能性が示唆された。 (3) 血清sialic acidの変動が,常に〓紙電気泳動法による血清蛋白分画のalbuminの減少とα_<1->, α_<2->あるいはβ-globulinの増加を伴なうことより,前者の変動は血清glycoproteinに基くものと思われる。 (4) 脳下垂体前葉および副腎皮質系に対する典型的stressorである寒冷および温熱に暴露した家兎群で,血清sialic acidの著明な上昇を認めたことにより,その変動機構の一環として,脳下垂体-副腎皮質系の介在を否定できない。従って,さらに広範囲な諸種の環境因子による血清sialic acidは変動の予想される。 (5) 以上の結果,血清sialic acidは,産業慢性中毒の統計的判別指標として有用であり,とくに作業環境に2種類以上の異種の中毒物質が共存する場合や寒冷あるいは温熱等の物理的異常環境下における中毒状態の指標として一層有効性を発揮することが期待される。
- 社団法人日本産業衛生学会の論文
- 1968-02-20
著者
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