ベンゾール曝露時の白血球の変性 : (1) ベンゾール中毒におけるモムゼン中毒顆粒の出現 : (2)ベンゾール中毒に出現するモムゼン中毒顆粒の本体について
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概要
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白血球数がベンゾール中毒の早期診断に持つ意義を検討する目的で,ラットにベンゾールを含むオリーブ油を連日注射して,Mommsen中毒顆粒を好中球に多数出現せしめた。Mommsen中毒顆粒は,これまで原形質の成熟障害の結果,出現すると考えられており,この顆粒の出現率と白血球数の変化との関係を分析した。(1)白血球数はベンゾール0.2cc/kg体重投与群では増加,正常,減少の傾向を0.5cc及び1cc/kg体重投与群では減少,増加,減少の傾向を示した。ベンゾールの造血機能に対する刺戟と抑制の影響の組み合わせが,投与量に応じ,種々なる像を示すと考えられる。(2)このような変化にもかかわらず,Mommsen中毒顆粒はつねに高い出現率を示した。この際,顆粒は好中球の原形質の中に,あるいは部分的に,あるいは全体にわたって現われ,その大きさは大小さまざまであった。概して中毒の初期には多数の小顆粒の出現多く,中毒の進展とともに顆粒は大きさを増し,その数は減じた。(3)白血球数分布範囲は25日目に注射前のそれと近接しているが,中毒顆粒の出現率はかなり高く,0.2cc群では20%,0.5cc群では37%,1cc群では41%であり,たとえ,白血球数が正常範囲にあって,量的には正常とみなされる場合でも,質的には異常な場合のあることが明らかとなった。(4)0.2cc群では40日以後,1cc/kg体重の純ベンゾール投与によって白血球数は急減したが,これに伴なってMommsen中毒顆粒出現率は急減し,すでに臨床例で報告された如く,この顆粒の出現が骨髄における白血球の病的再生像の存在と関係のあることを示した。(5)骨髄好中性細胞における出現率は末梢よりつねに高かった。 モムゼン中毒顆粒の出現の機構については多く論ぜられたが,その本態が不明なるために,決定的なる結論が得られていない。著者はベンゾール中毒におけるその出現の機構を知る手がかりを得る目的で,組織化学的方法を用いて顆粒の本能を研究した。(1)ラッテにベンゾールを含むオリーブ油を連日筋注して,末梢好中球に中毒顆粒を出現せしめ,その末梢血及び骨髄標本をMommsenの方法に従って染色し,顆粒の性質を検討した。(2)染色液のpHが3∼7の範囲ではpH 5.4で出現率が最も高く,その上下のpHで著るしく減ずる。出現率が高いものではpH 7の近くでも出現する。メチル緑・ピロニン染色陰性,Feulgen反応陰性,リボヌクレアーゼ消化試験陰性。トルイヂン青染色弱陽性,唾液消化試験陰性,PAS反応陰性,ヒアルロニダーゼ消化試験(〓丸抽出製剤)陽性。トリプシン消化試験弱陽性,アルコール,エーテルに不溶。KCl溶液,NaCl溶液で抽出される。(3)生体内でpH 3以上で好塩基性を示すものは核酸,酸性多糖類,クロモリポイド,尿酸及びその誘導体と考えられるが,上の結果から,蛋白質と結合した酸性多糖類が顆粒に含まれていると推定される。PAS陰性であることは酸性多糖類の量が少ないか,硫酸エステルの形が(ヒアルロニダーゼ消化陽性のものはコンドロイチン硫酸A及びC)をとっていると考えられる。顆粒の染色性は顆粒に含まれる酸性多糖類の量及び重合度に関係があると考える。(4)骨髄細胞成分に酸性多糖類が含まれるという他の所見とあわせ考え,顆粒の出現は骨髄細胞内酸性多糖類の代謝の異常に関係ありと考える。
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