リョクトウにおける生育型の地理的分布
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概要
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作物の種内変異に関する情報は育種にとって不可欠のものである.そこで熱帯アジア地域における重要なタンパク供給源になっているアジア原産のマメ科作物リョクトウ(Vigna radiata)の生育特性(開花までの日数, 茎長および側枝数)に関する遺伝的変異をタイ国チャイナート畑作研究センターにおいて調査した.そのデータに基づいてアジア各地から集められた497系統のリョクトウ在来種を8タイプの生育型に分類し, 各生育型系統の地理的分布を調べた.その結果, 各生育型系統の分布パターンには緯度に沿った明瞭な地理的勾配が認められた.低緯度に位置するインドネシアとタイのリョクトウは主として晩生で茎長が長く側枝数の多い生育型(生育型8)を示した.中緯度に位置する台湾やフィリピンのリョクトウは茎長は長いが側枝数の少ない生育型(生育型3,7)を示す系統が多く, 早晩生の点ではフィリピンの系統の方が台湾の系統より早生のもの(生育型3)が多かった.高緯度に位置する韓国, アフガニスタンおよびイランのリョクトウは, 茎長が短く早生で側枝数の少ない系統(生育型1)が多かった.インドのリョクトウは各生育特性に関して最も高い多様性を示し, 多様な生育型の系統が最も均一に分布していた.これらの結果から, タイにおいて作付け体系内に組み込み易く, 高収量で生育期間の短い品種を育成するのに適した生育特性を持った系統はフィリピンに多く分布しており, 特定の有用形質, 例えば耐病性や耐虫性等の遺伝子源を探すためには, 多様な生育特性を示したことから遺伝的多様性が高いと期待されるインドの系統が有望であると考えられた.
- 日本熱帯農業学会の論文
- 1991-09-01
著者
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友岡 憲彦
熱帯農業研究センター
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ライルンルアン チャランポン
タイ農業局チャイナート畑作研究センター
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ナキラクス ポチャニー
タイ農業局チャイナート畑作研究センター
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タバラスーク チャラスポン
タイ農業局チャイナート畑作研究センター