水田条件下におけるイネ乾燥耐性の品種間差異
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概要
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干ばつが頻繁に起こる地域でイネ収量の安定と向上を図るには, イネの乾燥回避性(干ばつ条件下で植物体内水分状態を良好に保つ能力)を高めることが提案されてきた.一方, 乾燥耐性(干ばつ条件下で植物体内水分状態が悪化しても収量が低下しない能力)も, 収量を改善すると考えられたので, 乾燥耐性と収量との関係を調査した.圃場に雨よけビニールハウスを2棟設置, 1987年には10品種, 1988年には24品種を栽培し, 1棟では早生品種の穂ばらみ期から晩生品種の出穂までの間, 給水を停止することによって土壌を乾燥させ, もう1棟は終始湛水条件の対照区とした.乾燥回避性は積算水ストレス, CWS(水ストレスの強さと期間の総合評価値), 乾燥耐性は水ストレス感受性, K(積算水ストレス当りの収量の変化程度)を用いて評価した.出穂日, 収量, 乾燥回避性, 乾燥耐性いずれにも品種間差があった.乾燥回避性と出穂日との間には対応関係がなかったが, 乾燥耐性と収量は乾燥が与えられた発育段階により大きく異なった.一般に, 登熟初期に乾燥が与えられた品種は, 後期に与えられた品種より, 乾燥耐性, 相対収量ともに小さかった.しかし, 登熟初期に乾燥が与えられたにもかかわらず, 桂朝2号, 密陽23号, IR36は, 乾燥耐性があり, 相対収量も大であった.特に, 桂朝2号は湛水条件下での収量が高かったので, 乾燥条件下の収量は供試品種中最高であった.以上より, 乾燥耐性の改善によって干ばつが頻繁に起こる地域のイネ収量が改善される可能性が示唆された.
- 日本熱帯農業学会の論文
- 1996-12-01
著者
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