ニッポンヒゲナガカワトビケラの生態学的研究 : 5. 成虫の溯上飛行
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概要
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1.ニッポンヒゲナガカワトビケラの飛翔活動は早期と夕方にみられるが, 飛翔中に現われる行動型は, 1)群飛, 2)往復飛行, 3)雄の溯上, 4)産卵場所への雌の飛行の4型に大別することができる.2.上記4つの行動のうち群飛を除いては, 流水上で行われ, 上記2), 3)および4)は複合してみられる.飛行数の時間的変化の例を示した.3.定点通過数から, 上流へ飛ぶ虫の率や下流へ飛ぶ率をしらべると, 前者は78.3%, 後者は21.7%である.捕獲によってもほぼ同様の比率を得た.4.溯上集団の特性は, 雌の比率が高く, かつ成熟卵をもつ虫の比率が高いことである.このことから溯上飛行が産卵場所を求めての行動であることが一層明確になった.5.標識・捕獲実験によって移動距離をしらべた結果, 1回の飛行で2.5∿3.1km程度の溯上能力をもつことがわかった.また飛行速度と飛行継続時間から移動距離を推定すると, 上記とほぼ近い結果になる.6.上記実験で捕獲した虫は, 記号保有率が高い.このことは溯上飛行を, 成虫の多くの個体の移動とみてもよいと考えられる.7.以上の結果をもとに, 溯上飛行の生態的意義と1世代の移動距離の推定について若干の考察を加えた.
- 日本昆虫学会の論文
- 1981-03-25