富士山(南斜面)におけるショウジョウバエ
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概要
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1971年および1972年の2年間, 富士山の南斜面の海抜600mから2, 400mの森林限界にかけてショウジョウバエの採集を4月から12月の間毎月おこない, 同時に植物相の観察をした.1) 採集したショウジョウバエの総数は7属, 49種, 7, 397個体であり, 新種として1種(S. clavata)を発見した.植物は65科, 223種を記録した.2) 採集地点が高くなるにつれて植物の種の数とともにショウジョウバエ属の種の数および個体数は少なくなり, とくに, 1, 700m以上では著しく減少した.S. graminumやS. clavataなどは高地で多く, 反対にD. sternopleuralisやD. bizonataなどは, 1, 700m以上の高地では採集されず, 種によって棲息高度の違いを認めた.3) 海抜600m付近におけるショウジョウバエの全集団は, 春(5月)と秋(10月)にそれぞれピークを示し, 4月から12月まで採集できた.しかし, 1, 400∿1, 600mでは5月から11月までに限られ, さらに1, 700m以上の地点では7月から9月の間しか採集できなかった.高度差のある地域におけるショウジョウバエ集団には変動がみられ, 高度が増すにしたがって成虫の活動期間が短いと考えられた.一方, 種によってもそれぞれ特徴ある季節的変動が見られた.4) S. graminumやD. curvicepsなどのように明らかに夏期には高地に移動する種と, D. sternopleuralisやD. bizonataなどのように気温の変化に関係なく, つねに低地に棲息する種とのあることが認められた.
- 日本昆虫学会の論文
- 1975-03-25
著者
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