孤独性花蜂, コガタノコハナバチの生態学的研究 : (I) 営巣環境と営巣密度の変遷
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概要
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本論文はコガタノコハナバチの営巣環境, 営巣密度とその変遷について述べたものである.コガタノコハナバチは春期比較的早く出現する普通な花蜂の1種で, 西日本, とくに福岡地方ではナタネの有力ポリネーターである.この種の繁殖はほとんどナタネに依存している.筆者が生態を調査したコロニーは福岡市香椎の2つの地域(A : 香椎高校裏の灌漑用の堤防斜面とB : 三ケ月山山麓墓地)で営巣しているものである.1. 営巣は必らず単独で, 越冬雌(前年の5月-9月に交尾完了)によつて行なわれる.営巣開始日は卵巣の発達と相まつて, 越冬から覚めた1-2週間後の3月中旬頃から始められ, 4月中旬までに全ての個体(96%)が営巣を始めてしまう(第3図).2. 比較的裸地(粘土質土壌)を好んで営巣する習性があり, 雑草の茂つた場所では本種の巣は発見しがたい.A地域で, 最も営巣巣口数の多い場所での営巣密度は平均54/m^2, 最少9/m^2, 最大101/m^2であつた(第2表).巣口の分布は均一でなく, 近接しているものではその間隔は1cm以下のものがある.3.3年間の営巣密度の変遷を調査した結果(第4表)によれば, コガタノコハナバチのA地域での棲息密度は次第に低下している傾向を示している.ことに'60年には前2年に比較して営巣巣口数が著しく減少している.このコロニーの衰退の最大の原因は雑草の繁茂による営巣土壌環境の悪化によつて, 越冬雌がこれらの地域で営巣しなくなつたためで, 天敵その他の要因は直接的に作用していなかつたものと考えられる.
- 日本昆虫学会の論文
- 1966-09-10
著者
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