日本産カマバチ類の生態に関する比較研究 : (14) トビイロカマバチ Haplogonatopus apicalis Perkins の子孫の性比とサイズに及ぼす寄主幼虫の齢及び寄主の性の影響
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概要
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寄主の密度, 齢構成等を変えた実験区を設定し, ここにトビイロカマバチのさまざまな日齢の既交尾雌1頭を放飼して産卵させた.(1) カマバチ受精雌の3∿5日齢, 11∿14日齢及び20∿23日齢のものに寄主の第4齢幼虫40頭に産卵させた.カマバチ子孫の雄比は3∿5日齢のものでは0.77, 11∿14日齢では0.66及び20∿23日齢では0.65となり, 統計学的に有意な差はみられなかった.したがって, 子孫の性比は母親の日齢に影響されないと考えられる.(2) 第4齢幼虫のみで構成された3つの寄主密度(10, 40及び100頭)に6∿8日齢の既交尾雌を放飼して求めた雄比は, 10頭区では0.76, 40頭区及び100頭区では0.67となり, これらの密度間では有意差はみられなかった.この結果から, 子孫の性比は寄主密度に影響されないと考えられる.(3) 異なった齢の寄主幼虫(2∿5齢)を, それぞれ10頭ずつ組み合わせた計40頭の寄主群からなる実験区に6∿8日齢のカマバチ既交尾雌を放飼して, 寄主幼虫齢別の産卵の頻度と性比を求めた.産卵の頻度は第3齢幼虫で最も高く(38.5%), 雄比は第3齢幼虫で最も低かった(0.32).この結果から, 寄主の齢別で潜在的な資源価値が異なり, 既交尾雌は寄主の齢に応じて産下する卵の性を決定していると推定された.(4) 寄主の第4齢幼虫に寄生させたカマバチの子孫の性比と寄主の性との関係を分析した.雌寄主では, 雄寄主よりも雄比は低下する傾向がみられたものの, 有意差はみいだせなかった.(5) トビイロカマバチの雄子孫, 雌子孫とも寄主の性が雌の時, 頭幅が大きくなった.
- 1998-06-25
著者
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