安定炭素・窒素同位体により推察されるタイ南西沿岸域マングローブ生態系における有機物の特徴
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概要
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タイ南西沿岸域における堆積物中有機物の特徴を明らかにする目的で,陸上植物やマングローブ,河川や沿岸の懸濁態有機物(POM)および堆積物について,安定炭素・窒素同位体比を測定した。試料は,都市の隣接するトラン川流域と,目立った河川の流入がないムック島周辺地域で採取した。陸上植物や河川のPOMのδ ^<13>Cは,両地域で大きな差はなく-24‰以下の値を示した。これは,河川から流入する有機物がC_3植物の影響を強く受けており,δ ^<13>Cの高いC_4植物の影響は小さいことによると考えられる。一方,マングローブ,河川のPOMや堆積物のδ ^<15>Nは,トラン川地域で高い値を示した。これは,農耕や隣接する都市からの排水の流入など人間活動による影響により,トラン川の硝酸のδ ^<15>Nが高くなっている可能性を示唆している。本論文では,堆積物中有機物の起源として,陸上植物,マングローブ,沿岸のPOMに加え,すでにこの海域で測定値が報告されている海草を含めた4種のエンドメンバーを想定し,確率論的な計算を用いることにより両地域における寄与率の違いを明らかにした。その結果,堆積物中有機物の主要な起源と考えられたのは海草であり,トラン川地域で36%,ムック島地域で42%を占める。沿岸のPOMの寄与は,トラン川地域で高く(19%),ムック島地域では低い(13%)。陸上植物とマングローブの寄与はいずれも23%前後で地域による大きな差は見られなかった。
- 日本海洋学会の論文
- 2002-03-05
日本海洋学会 | 論文
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