日本産Gerris属Macrogerris亜属のmtDNA塩基配列,外部形態および交尾行動の解析 : 系統間の進化的関係について(2002年度学会賞受賞論文)
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概要
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北海道から九州までの各地から採集されたGerris属Macrogerris亜属のアメンボのオス成虫について,ミトコンドリアDNAのcytochrome b遺伝子の一部の塩基配列を比較した.その結果,コセアカアメンボG.smcilicornisとエゾコセアカアメンボG.yezoensisの種内では塩基配列は比較的均一であったのに対し,生殖器の形態からヤスマツアメンボG,insularisと見なされる個体間では著しい変異が認められた.分子系統解析の結果,後者には3つの集団,タイプA,BおよびCが含まれていることが明らかとなった.これら3タイプ間の塩基置換率は,別種であるコセアカアメンボとエゾコセアカアメンボの間におけるものよりも大きな値を示した.PCR-RFLPによる多数個体の解析では,タイプBとCの分布域は,それぞれ上信越高原以北の本州北東部と九州を含むそれ以南の地域に分断されていること,またタイプAの分布域は本州において両者と重複していることが明らかとなった.これら3者のオス成虫は,Macrogerris亜属の種識別に最も重要とされているオスの交尾器の形態では区分できないが,タイプAと他のタイプでは,頭部,前胸背,前脚腿節のサイズおよび前胸背の彩色に明らかな差異が認められた.またタイプBとCでは,後翅の長さに翅型二型(長翅と短翅)があることも明らかとなった.交尾行動の親和性に関する予備的な観察では,タイプAと他のタイプの間に,不完全ながらも,交尾前の生殖的隔離があることが判明した.これらの結果に基づき,3タイプ間の進化的関係について考察した.
- 日本昆虫学会の論文
- 2003-09-25
著者
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