広島県と島根県に分布している粘土鉱物をうめた割れ目 (粘土細脈) の配行解析と形成年代
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概要
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広島県や島根県に分布している花樹岩や流紋岩中には、割れ目をうめて、いわゆる粘土細脈が多く認められる。この粘土細脈中の主な粘土鉱物は雲母粘土鉱物、スメクタイト、カオリン鉱物である。雲母粘土鉱物のK-Ar年代測定を行ったところ、その形成年代は母岩の花崗岩や周辺の花崗岩のK-Ar年代とほとんど同じか、あるいはやや若い値を示す。このことは粘土鉱物をうめている割れ目(粘土細脈)は花崗岩が固結後間もない時期に形成されたことを示している。そこで、広島県と島根県に分布している花崗岩地域と三周辺に花崗岩が存在している一部流紋岩地域を13の領域に分け、粘土細脈の配付(走向、傾斜)を調べた。またその領域からそれぞれ代表的脈を20選び、そのK-Ar年代測定を行なった。その結果、粘土細脈のK-Ar年代は31-80Maである。また、粘土鉱物をうめている割れ目(粘土細脈)の配行の解析から、それらは広域圧縮応力場で形成され、最大圧縮応力の方向は白亜紀から古第三紀にかけて少なくとも数回変化したと推定された。すなわち、約5000万年の間にWNW-ESE、NE-SW、E-W、NW-SEあるいはNNE-SSW、E-Wそして最後にN-SあるいはNW-SEである。今回の結果と従来貫入岩から求められている応力場の変遷とを比較すると類似点が多い。すなわち、今まで割れ目や貫入岩の配付解析から求めていた応力場解析に対して、具体的年代を特定することができることを意味している。このことから少なくとも広島県や島根県の花崗岩分布地域においては、粘土細脈の配行解析は古応力場の変遷を知る上で一つの有効な方法であることを示している。
- 一般社団法人日本応用地質学会の論文
- 1994-06-10