金属グリッド形サーキュラライザの設計
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概要
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円偏波を用いるシステムにおいて, 直線偏波を円偏波に変換したり, あるいはその逆の変換を行う装置(サーキュラライザ)は, 重要な構成要素である。まず, 最も構造が簡単で, 本研究の基礎となる金属グリッド形サーキュラライザについて述べる。その構造を図1に示す。薄い金属板を, 等しい間隔で格子状に多数配列したものである。円偏波は, 大きさが等しく, 空間的に直交し, 時間的に位相が90度異なった, 同一周波数の二つの直線偏波成分の合成と考えられる。従って, 金属板に45度傾いた直線偏波を入射させると, 入射電界Eは大きさの等しい同位相の二つの成分E_x, E_yに分解できる。金属板に垂直な成分E_xは, 金属グリッドにより影響を受けずに, 自由空間と同じ伝搬速度で通過する。一方, 金属板に平行な成分E_yの位相速度vは, v=c/(√(1-(λ_0/(2a))^2)) (1) (c:自由空間中の速度, λ_0:自由空間波長, a:板間隔)で与えられ, v>cとなるので, E_yはE_xよりも進む。それ故, 金属板の間隔aと幅bを適当に選べば円偏波が得られるのである。位相条件は(2πb/(λ_0))-(2πb/(λ_g))=π/2 (2), E_yに対するインピーダンス整合条件はb=λ_g/2 (3)である。式(1), (2), (3)から, b=3λ_0/4, a=0.671λ_0となる。次に, 筆者らが製作せんとするサーキュラライザについて述べる。その構造を図2に示す。2枚の平行な金属板の間に, 比誘電率ε_rの誘電体を詰め, 間隔をaに保つ。自由空間波長λ_0の直線偏波を, 電界が板に平行となるようにして伝搬させる。TE_<10>波の位相速度vは, 式(4)で与えられる。v=c/(√((ε_r)-(λ_0/(2a))^2)) (4) 即ち, 金属板間に比誘電率ε_rの誘電体を充填したものを一つの媒質と考えると, その等価比誘電率ε_eは, ε_e=ε_r-((λ_0)/(2a))^2 (5)となる(1<ε_e<ε_r)。このことを利用して, 設計を行う。図1と同様に, 45度斜偏波を入射させる。サーキュラライザ内のE_x, E_y)波長をそれぞれλ', λ_gとすると, λ'=(λ_0)/√(ε_r) (6), λ_g=(λ_0)/(√(ε_r-((λ_0)/(2a))^2)) (7)で与えられる。また, 位相条件は(2πb/(λ'))-(2πb/(λ_g))=π/2 (8) E_xに対する整合条件はb=λ' /2 (9), E_yに対する整合条件は1=(ε_r)-(λ_0/(2a))^2 (10)である。式(6)〜(10)から, ε_r=4, a=λ_0/(√3(ε_r)), b=λ_0/(√2(ε_r))となる。そこで, 使用波長を3.2 cmとすると, 金属板の幅bを2.4 cm(図1)から0.8 cm(図2)に薄くすることができる。
- 社団法人電子情報通信学会の論文
- 1997-03-06
著者
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