炭焼き加熱特性の解析(第1報) : 熱流束一定条件下での伝熱特性の比較
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概要
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炭火で加熱した食品はおいしいといわれるが,その特性や理由を明確に説明できる科学的な実験データはほとんどない.炭火と他の熱源で加熱した食品の調理成績め比較が行われている場合でも,熱流束など実験条件が一定ではない.本研究では,熱流計を用いて熱源からの熱流束を測定し,炭火と熱流束が等しくなる加熱方法を他の熱源で設定し,放射伝熱の割合を測定した.さらに,熱源からの熱流束が一定の条件下で一定時間3種類の食品を焙焼,し,食品の物理的な性質に着目し,機器測定による比較検討を行った.熱源には,炭火と家庭用ガスこんろのガスバーナー,ガスこんろで加熱した焼網(黒色表面加工したもの),遠赤外線領域の放射率の高いミラクロンヒーターの4通りの方法を用いた.食品試料ははんぺんおよび鶏肉,鮭を用い,試料の表面温度,焼き色,水分蒸発率,表面部の水分含有率,硬さを測定し比較した.炭火(ウバメガシ白炭)の燃焼時の安定状態において,炭火から100mmの距離における熱流束は1.1×10^4 W/m^2であった.他の熱源についても熱源からの距離100〜120mmで熱流束が炭の場合と等しくなる加熱条件を定め,全伝熱量に対する放射伝熱の割合を比較した.その結果,炭火は約75%が放射伝熱であること,ガスバーナーでは放射伝熱の割合が顕著に低いこと,ガスこんろと焼網を併用したり,ヒーターを使用することによって放射伝熱の割合は炭火と同程度まで高めることができることが明らかになった.焙焼した食品の調理成績は,放射伝熱の割合の高い炭,焼網,ヒーター間では有意な差は認められず,対流伝熱の割合の高いガスバーナーの結果のみ,食品表面温度や焼き色,水分蒸発率に違いが認められた.しかし,伝熱方式が大きく異なるガスバーナーでも焼網を併用することによって,焙焼した食品の物理的な性質にも有意な差がみられなくなることが明らかとなった.これらの結果から,熱流束および放射伝熱の割合を炭と同程度まで増やすことができれば,食品の焙焼後の焼き色や水分蒸発など物理的な性質に関しては,炭火で加熱したものと近い調理成績を得ることができると考えられる.
- 社団法人日本家政学会の論文
- 2004-09-15
著者
-
渋川 祥子
元横浜国立大学
-
杉山 久仁子
横浜国立大学
-
阿部 加奈子
東京都墨田区立外手小学校
-
渋川 祥子
聖徳大学人文学部
-
辰口 直子
食と暮らし研究舎
-
渋川 祥子
横浜国立大学 教育人間科学部
-
杉山 久仁子
横国大 教育人間科学
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