乳児における規準喃語の出現とリズミカルな運動の発達的関連
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
従来より, 音声発達期の乳児において, 規準哺語の出現とリズミカルな運動のピーク期のあいだに発達的同時性が見られることが示唆されている。本研究ではこの現象についてより詳細に検討するため, 乳児5名の月齢6〜11カ月の縦断的観察データをもとに, リズミカルな運動の質的分析を行った。また, これらの運動と発声との同期的関連を調ベ, 先の研究で議論された音声とリズミカルな運動の同期現象のメカニズムについて検討した。分析の結果, 哺語の出現とリズミカルな運動のあいだに発達的同時性が見られることが実証された。ただし, 音を産出しないリズミカルな運動(e.g., 上下に手が揺れる)は哺語出現期をピークに減少してゆくのに対し, 音を産出する運動(e.g., 玩具を打ちつけろ)は哺語出現以降, 増加することが明らかとなった。また, これらの運動と音声の同期性を見ると, 特に, 音を産出しないリズミカルな運動において同期する割合が高いことが明らかとなった。この運動が, 乳児によって, より非目的的に行われるものであると想定すると, 哺語出現期に見られる音声とリズミカルな運動の同期現象は, 乳児によって意識的に行われる行動というよりもむしろ, 彼らの音声生成や身体運動のコントロール機能がまだ未成熟なものであろために生じるものなのではないかと推測される。
- 1998-12-15
著者
関連論文
- ろう児と健聴児の比較からみた前言語期の乳児の音声と身体運動の同期現象
- 言語発達・認知発達研究の動向と今後の課題 (わが国の最近1年間における教育心理学の研究動向と展望 : 発達部門(乳・幼児期))
- 乳児における規準喃語の出現とリズミカルな運動の発達的関連