開眼手術後における形の識別活動とその内的システム
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
開眼手術後の, 形を捉える視・運動系活動とそれを支える内的システムについて, その触・運動系活動との関連において, 開眼者の言語報告を組織的に取り出す方法を主軸に検討した。本稿に登場する開眼者SMは, 先天性白内障のために両眼とも失明し, 2歳のときに左眼の眼球摘出手術を, 12歳のときに右眼の水晶体摘出手術を受けた。この有眼手術から19年後, 実験が始まり, このとき, 手で触れば即座に同定し得る形でも眼で見てはその識別が困難な状況にあった。その後, SMは, 頭部の運動あるいは図形対象そのものの移動を介した視点の動きによって形の属性を取り出すようになり, 形の識別は成立の兆しをみせた。この時期, SMが内的に保持しているシステムに関する言語報告を組織的に取り出すと, 視・運動系と触・運動系の2つの系に各々依拠する別種の形態像が保持されていることが見出された。すなわち, 触・運動系においては形の全体的な形態像が保持され, 一方, 視・運動系では形を捉える際の頭部の動きとその動きによって取り出された形の属性が同時に言語化されて保持されていた。そして, SMが眼前の形を見てその形態名を判断するまでには, 眼で敢り出した形の属性を内的に保有する知識と比較照合する過程が存在した。この過程は, 形を捉える際の所要時間として現れ, 内的に比較照含する個数が少なくなる弁別事態ではその所要時間は短くなった。
- 1996-12-20
著者
関連論文
- 幾何図形描画のつまずきと形成 : WPPSIの動作性検査で低得点を示した事例を対象として
- 視野変換事態における移動空間と操作空間の形成過程(1)(発表要旨,日本動物心理学会第61回大会・日本基礎心理学会第20回大会合同大会)
- 視覚遮蔽事態における移動空間と操作空間の形成過程(研究発表G,VII.第19回大会発表要旨)
- 先天性白内障の早期手術後における移動空間の構築過程(研究発表E,AVプレゼンテーション,VII.第18回大会発表要旨)
- 開眼手術後の,形-視・運動系活動の形成過程と,その過程に関与する触・運動系活動の働き(セッション2,VI.第15回大会発表要旨)
- 開眼手術後における視覚と触覚の断絶,その調整過程(C-1,VI.第13回大会発表要旨)
- 先天性白内障の手術前後における視・運動系と触・運動系の活動(1)
- 先天性白内障手術後における形態視機能の生成過程(VI.第12回大会発表要旨)
- ソナーベース歩行ガイドロボットとその心理学的評価
- ソナーベース歩行ガイドロボットとその心理学的評価
- 先天性白内障手術後における遠方視機能と即時視機能の形成(A-III.,VI.第11回大会発表要旨)
- 視覚遮蔽事態における外界の構造把握(C.口頭発表,VII.第9回大会発表要旨)
- 開眼手術後における形の識別活動とその内的システム
- 14)ソナーベース歩行ガイドロボットとその心理学的評価(画像情報システム研究会)
- 視野上下反転視における歩行行動と視野の揺れ
- 先天性白内障手術後の形態視機能の形成過程(第1回大会研究発表要旨)
- 視覚障害者の行為を探る : 空間操作研究における研究Strategyの検討(自主シンポジウム1,日本特殊教育学会第39回大会シンポジウム報告,実践研究特集号)
- かかえ込み宙返りにおける視野制限の影響(日本基礎心理学会第30回大会,大会発表要旨)
- 視野の遮蔽と変換,知覚行動のつまずきと形成 : 同一者・同一課題・二日間連続着用実験(日本基礎心理学会第30回大会,大会発表要旨)
- 中心・周辺部位の同時視野制限と移動行動(日本基礎心理学会第31回大会,大会発表要旨)