Tsukuba情動系ラットにおける餌運搬行動

概要

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本研究では,190,300,500,750mgの4種類の大きさの餌を用いて,不安・恐怖の情動喚起が遺伝的に異なるTsukuba情動系ラット(THEとTLE)の餌対処行動選択を比較した。その結果,情動性の低いTLEが餌の大きさに伴い餌運搬率を有意に増加させるのに対し,THEでは運搬率の増加傾向がほとんどみられず, 190mg以外の餌ではむしろTLEの方がTHEよりも運搬率が高い傾向にあるという予想に反した結果が得られた。この事実は,餌対処行動の選択が情動喚起とは別の動機づけ機制に基づいてなされるという可能性,すなわち不安や恐怖の情動喚起過程を経ずに餌対処行動の選択を調節するという認知的な動機づけ機制の存在を示唆する。しかし,従来の研究からTHEとTLEの差異は主に場面の新奇性に対する嫌悪的・忌避的反応性の差異とみることもでき,それは餌運搬行動の選択に関わる「危険」,すなわち巣外における捕食者の出現や危険物の接近,の回避傾向とは異なるのかもしれない。したがって,不安・恐怖の情動喚起が餌運搬行動の選択に影響するか否かに関しては,新たな方法によりさらに検討を加えていく必要がある。
日本動物心理学会の論文
2003-12-25