SI-2 2. 培養細胞におけるライソゾーム系の動態
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概要
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種々の培養細胞において, 酸性ホスファターゼ(ACPase)活性を電顕細胞化学的に検出し, ライソゾーム系の動態を観察した。方法 : ヒト皮下組織由来の線維芽細胞(二倍体細胞系), マウス皮下またはマウス腎由来の線維芽細胞(初代培養系), CHO, HeLa, PtKの各細胞系および129系マウステラトーマ細胞(以上株細胞)を用いた。あらかじめテフロンで処理(Chang, 1971)した11×22mmカバーグラスを, ファルコンシャーレの底においてこれらの細胞を培養し, カバーグラス上に単層細胞層を形成させた。このカバーグラスを, 2%グルタルアルデヒド(0.1Mカコジル酸塩緩衝液, 8%しょ糖)中に投入し, 0゜-4℃で30分間固定した。緩衝液による数時間〜1夜の洗浄後, 10%にDMSOを加えたGomoriの滲漬液(Ericsson, 1972)により, 37℃において40〜90分滲漬, 1%緩衝オスミウムによる後固定(0℃, 1時間)およびアルコール脱水を経てシリコンゴム包埋板上でEponに包埋した。Epon硬化後, 液体窒素中に投入することにより, 細胞を含むEpon薄板をカバーグラスより分離させ, Eponブロックの先端に貼りつけて, 超薄切片または1〜3μm厚切切片を作製, 通常の電顕(80または100KV)または超高圧電顕(1000KV)により観察した。結果 : ACPase活性は, これらすべての細胞において, ライソゾームむよびGolgi装置に陽性であった。ヒト線維芽細胞においては, 直径約0.5〜1μmの, PASおよびアルシアンサンブルー陽性の顆粒にもしばしばACPase活性が認められた。このようなACPase陽性顆粒は, 培養時間および細胞のagingにともない増加する傾向が認められた。このような顆粒のほとんどがACPase活性を示す細胞において, ときにACPase活性陽性の粗面小胞体(rER)がこれらの顆粒または貪食胞と思われる空胞と融合しつつある所見が得られ, 少なくとも一部の二次ライソゾームは, rERから直接ACPaseを受けとることにより形成されることが示唆された。Golgi装置の活性は, (1)典型的な層板状の槽, (2)最内層に相当する微細網状の構造, および(3)いわゆるGERL(Novikoff, 1971)相当部に認められた。このGERL相当部は, ACPase活性を欠く槽状の中央部と, 強いACPase活性をもつ網状あるいは小管状の周辺部とから成り, 小管状部分の先端からは, ACPase活性をもつcoated vesicleが形成される所見がしばしば観察され, 一次ライソゾーム形成の場であることが示唆された。これらのライソゾーム系の三次元構造を明らかにするため, 1〜3μm切片を超高圧電顕により観察したところ, GERL相当部が高度に複雑な三次元的網工をなし, しかも相互に連結している一連の構造であること, また超薄切片では小型のライソゾームと思われた構造の多くがGERL相当部の断面であることが示された。
- 日本組織細胞化学会の論文
- 1977-10-20
著者
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