児童が学級のメンバーの差異を捉える視点 : 個人的構成概念の分析から
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概要
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児童が学級のメンバーの差異を捉えるときに重要な視点とはどのようなものなのか,そのような視点には学年や性別によって異なる特徴が見られるのかについて検討した。学級のメンバーの差異を捉える視点の検討にあたっては,Grid technique(Kelly,1955)を用いて,学級生活において重要な人物から構成された3人組を比較させ,2人に共通する類似性とそれらとは異なる3番目の人物の対比性を,個人的構成概念として抽出させた。2年生(37名)・4年生(38名)・6年生(37名)児童が抽出した個人的構成概念を分析した結果,総抽出数では学年間に差が見られず,高学年ほど多様な視点を用いる傾向は確認できなかった。ただし,その内容では,(1)2年生でも他学年と同様に特性を重視することや,他学年に比べて特定の個人に向けられる対人態度への関心が高いこと,(2)4年生では性別や居住地域などの事実的情報に関する視点が顕著であること,(3)6年生では評判(人気)や友人関係の持ち方などの公共的視点が優勢になることなど,学年によって異なる特徴が見出された。本研究で得られた結果は,従来の対人認知構造の発達研究から導かれる,具体的・表面的・周辺的・自己中心的把握から抽象的・内面的・中心的・公共的把握へという変化のパタンには必ずしも一致しないものであった。
- 2003-04-20