前立腺癌患者における粗核内DHT濃度測定の有用性に関する研究

概要

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前立腺肥大症(BPH)52例及び前立腺癌(PC)44例における核内及び粗核内5α一dihydrotestosterone(DHT)濃度を測定し検討を加えた.BPH組織12例における基礎的検討で,核内DHT濃度はDTT,Triton X-100,DNase I処理といった核純化操作には影響されず,またandrogen receptor(AR)とDHT濃度との相関は,粗核塩抽出分画において最も高かった(r=0.748,p<0.01).PC症例におけるDHT濃度との関連性については,粗核塩抽出性分画,粗核塩抵抗性分画いずれも悪性度及びstageの高いものほどDHT濃度が低い傾向が認められた.また,内分泌療法奏効群と無効群では奏効群が有意に高値を示し,androgen依存性のcut off値は粗核塩抽出性DHT,粗核塩低抗性DHTは5pg/mg p.,両者の和である粗核総DHTは10pg/mg p.が適当と考えられた.12カ月以上経過を観察し得たPC患者における臨床効果の検討では,粗核総DHTが10pg/mgp.未満の群は予後が悪く,一方,10pg/mg p.以上の群では内分泌療法が奏効したが,再燃例が10pg/mg p.以上20pg/mgp.未満の群に認められ,20pg/mgp.以上の群には認められなかった.以上より,粗核総DHTはPCのandrogen依存性の指標として有用であることが示唆された.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1989-09-20