抗Bromodeoxyuridine(BrdU)モノクローナル抗体を用いた膀胱移行上皮癌の細胞動態解析 : 組織学的悪性度との相関について

概要

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抗Bromodeoxyuridineモノクローナル抗体を用いて,膀胱癌の細胞動態を解析し病理組織学的悪性度との関連を検討した.37名の膀胱移行上皮癌患者に対して,経尿道的生検あるいは腫瘍切除をする前に,BrdUを静注しDNA合成期(S期)にある腫瘍細胞を標識した.摘出標本をただちに70%アルコールで固定後パラフィン包埋を行い,薄切切片を抗BrdUモノクローナル抗体を一次抗体とした酵素間接抗体法により染色した.Labeling index(LI)すなわちS期細胞の比率(S-phase fraction:SPF)は,BrdUで標識された細胞数の全細胞数に対する割合で求めた.その結果,Grade1のSPFの大部分が5%以下で,その平均は2.7±1.6%(mean±SD)であったのに対し,Grade2,3のSPFはそれぞれ8.3±2.1%,16.7±4.1%であった.非浸潤性腫瘍24例,浸潤性腫瘍13例の平均のSPFは,それぞれ7.0±5.9%,14.8±5.2%あり統計学的に有意であった(p<0.05).SPFが10%以上を示す膀胱移行上皮癌は,SPFが10%以下の場合に比べて増殖能が高く浸潤性であり,より悪性度が高いことが示唆された.以上の結果,BrdUによるLI(SPF)の算定は,個々の腫瘍の悪性度をよく反映しており,生物学的特性の客観的,定量的評価に有用であると思われた.
1988-11-20