斜方輝石のAl累帯構造によって制約されるマントルかんらん岩の上昇温度圧力史 : 北海道幌満かんらん岩体の場合
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概要
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マントルかんらん岩の上昇に伴う斜方輝石中のAl累帯構造の発達を単純な拡散律速反応過程としてモデル化し, かんらん岩のP-T史を決めるパラメータが累帯構造にどのような影響を及ぼすかを検討した。モデルでは, 岩石は平衡が成立している領域(例えば, ポーフィロクラスティック組織の細粒なマトリックス)とカイネティクスが支配している領域(例えば, ポーフィロクラスティック組織のポーフィロクラスト結晶粒)の二つに分けられる事を仮定している。さらに, カイネッテイクスが支配している領域の界面の組成が温度と圧力のみによって決まる等の単純化の後に球対称の解を得た。この解に基づいて, かんらん岩の上昇速度やP-T経路のAl累帯構造への影響を調べ, その結果を幌満かんらん岩体の上部と下部のP-T史の違いを理解するために応用した。幌満岩体の上部と下部に認められる斜方輝石中の系統的なAl累帯構造の違いを説明する上昇モデルとしては二つのシナリオがあげられる。一つは, 熱いダイヤピルモデルで, 岩体上部がより高温のダイヤピル内部を下部がより低温の外部を代表していると考える。もう一つは, 上昇中の加熱であり, 岩体上部がより高温の加熱過程をマントル浅所で経験したと考える。どちらのP-T史が妥当であるかは, 斜方輝石のAl累帯構造だけからは決められず, 輝石のCaの累帯構造やクロマイトスピネルとかんらん石の鉄-マグネシウム累帯構造などを検討する必要がある。
- 日本地質学会の論文
- 1997-04-24