新生代地殻変動による関東地方北部の重複変形
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概要
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東北日本においては,中央構造線の延長は地表にあらわれていないので,その運動を直接解析することはできない。越後山脈・足尾山地・八溝山地に分布する中・古生界は,複雑な構造を呈しており,そのプロセスの解析は,糸魚川-静岡線と阿武隈山地にはさまれた地域の地殻変動の様相を解く鍵を与えるものと考えられる。この地域は,西南日本の延長部が新生代の地殻変動によって屈曲した部分に当る。越後山脈と足尾山地では,中・古生界中に北西-南東方向をもつ古い褶曲系が認められ,この上に二次的な褶曲が重なって古い系を眼立たなくしている。この二次的褶曲系は北東-南西方向をとり,現在の構造はむしろこれによって支配されている。この二次的褶曲の時期は白亜紀後と思われるが,よりくわしい時期は現在のところ分らない。褶曲のほかに,この地域全域に破断面系が発達する。破断作用は第三紀前期から最近まで繰返し起き,これが東北日本弧の生誕と発展に深く関係していることは明らかである。中央構造線の延長が東北口本のこの地域にも存在するとすれば,それに沿う運動は,以上すべての変形運動と矛盾するものであってはならない。
- 日本地質学会の論文
- 1980-03-30