アルカリ長石のX線または電子線回折写真に現れる散漫線条反射,衛星反射及び付加反射に関する考察
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概要
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アルカリ長石におけるx線または電子線による散漫線条反射,衛星反射及び付加反射などに関する観察,並びに電子顕微鏡による微細組織の観察などのうち主なものを総括した。アルカリ長石において散漫線条反射,衛星反射及び付加反射などが生起する原因については然るべき研究が全くなされていない。筆者等はこのような現象が生起する原因は格子の規模における聚片双晶のあり方によるものと考え,例としてアルバイト式双晶をとり上げ,回折原理をふまえて計算を試み,次のような結果を得た。(1)格子がFig.2-Iのように例えばAAABBAAABBAAABB……(AとBとはアルバイト式双晶の関係にある,以下同様)のように規則的に積重なっている場合にはFig.2-IIのように付加反射を生ずる(超格子構造)。(2)格子がFig.3-IのようにBがA中に時折介在するものとし,その存在確率をαとする。このような場合(a)確率αが結晶の何れの部分においても一定であれば,Fig.3-IIaのように格子点から若干ずれた位置にシャープな反射が,(b)確率αが結晶の部分部分によって異ればFig.3-IIbのように同じく格子点から若干ずれた位置に散漫線条反射を生ずる。電子顕微鏡写真によると,クリプトパーサイトのあるものではKに富むバンドとNaに富むバンドとが交互に配列し,またあるものではKに富むバンドがジグザグしていてその間にNaに富む部分が菱形をなして存在し,Naに富む部分は何れの場合でも非常に細かいアルバイド式聚片双晶をなしている。Naに富む部分のアルバイト式聚片双晶が上記の(a)に該当するような場合はKに富む部分による反射は格子点に現われ,Naに富む部分による反射は前者から若干ずれた位置に生じ恰も衛星反射であるかのような観を呈する。(3)格子がFig.4-IのようにAAA……BBB……,またはその逆にBBB……AAA……のように積重なりの様式を変化するものとし,その変化の確率をαとする。このような場合にはFig.4-IIのように散漫線条反射を生じ,且つその中心にはシャープな反射が生ずる。高分解能電子顕微鏡によってこれらが実証される出よさほど遠くはあるまい。
- 日本地質学会の論文
- 1974-09-30
著者
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玉田 攻
Department Of Geology And Mineralogy Faculty Of Science Kyoto University
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上田 健夫
Department of Geology and Mineralogy, Faculty of Science, Kyoto University
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上田 健夫
Department Of Geology And Mineralogy Faculty Of Science Kyoto University