高山貫入複合岩体の石英はんれい岩中の輝石の累帯構造と結晶作用の経路
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
高山貫入複合岩体の主体をなしている石英はんれい岩は,著しい累帯構造を示す輝石を含んでいる。X線マイクロアナライザーによって,Caに富む輝石およびCaに乏しい輝石について,中心部から周縁部までの各微小部分の化学分析を行った。Caに富む輝石は,中心部ではCa_<43>Mg_<46>Fe_<11>からCa_<32>Mg_<38>Fe_<30>まで連続的にFe含量が増大する。しかし,周縁部ではFe含量は増えずにCa含量が増し,さらにこれよりもCa含量が高くFe/Mg比の低い普通輝石がその外縁をなしている。一方Caに乏しい輝石は,中心部はCa_4Mg_<63>Fe_<33>からCa_4Mg_<50>Fe_<46>まで連続的に累帯するシソ輝石とこれをとり囲むinverted pigeoniteよりなり,その外側にCa_2Mg_<47>Fe_<51>の鉄シソ輝石が最外縁部を形成している。しばしばこの最外縁部では,Caに富む輝石の外縁をなしているものと同じ組成の普通輝石が鉄シソ輝石と共存している。また,ピジオン輝石には,シソ輝石の周囲を囲まずに,累帯構造を示すCaに富む輝石と平行連晶しているものがある。これらの輝石に見られる著しい累帯構造は,マグマ中で早期に晶出した輝石が液相から容易に分離せずに,残液から晶出した輝石が累帯配列したことを示している。こうした累帯構造が示す輝石の結晶作用の経路は,早期にはソレーアイト岩系に見られるものに似ているが,末期にはカルタアルカリ岩に特徴的なものである。高山貫入複合岩体は,岩石の化学組成や鉄苦土ケイ酸塩鉱物の組合せなどから典型的なカルタアルカリ岩とされているが,その主体をなす石英はんれい岩中の輝石の累帯構造に見られる特異な結晶作用の経路。特に結晶の中心部にソレーアイト岩系のものに似た輝石が見出されることは,この岩体におけるマグマ作用の特徴の一つを示している。
- 日本地質学会の論文
- 1974-09-30
著者
-
冨田 克敏
Department of Geology and Mineralogy, Faculty of Science, Kyoto University
-
山口 佳昭
Department of Geology and Mineralogy, Faculty of Science, Kyoto University
-
冨田 克敏
京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室
-
沢田 順弘
Department Of Geology And Mineralogy Faculty Of Science Kyoto University
関連論文
- 丹沢トーナル岩複合岩体中の角閃石の離溶組織
- 丹沢山地石英閃緑岩中の角閃石の微細組織 : 深成岩および変成岩
- Ti-rich hornblende in successively zoned amphibole from thermally metamorphosed basaltic rock in the Shionomisaki igneous complex
- 酸化角閃石中の輝石ラメラ構造の高分解能電顕観察(角閃石研究の現状と課題-地団研第37回総会造岩鉱物シンポジウム-)
- 超苦鉄質岩の輝石にみられる結晶組織 : 深成岩および変成岩
- 高分解能電顕による輝石・角閃石族鉱物の内部構造及び組織(その2) : 深成岩および変成岩
- 信楽地域の花崗岩中のカリ長石の三斜度 : 深成岩
- 潮岬火成複合岩体の熱変成玄武岩産累帯角閃石のTiに富むホルンブレンド
- 金峰山石神山溶岩, 晶洞中のフッ素エデン閃石
- 離溶により生じた単斜シソ輝石母体の結晶構造について
- 高山はんれい岩にみられるホルンブレンド-アクチノ閃石-カミングトン閃石の不混和と局所平衡 : 深成岩および変成岩
- 深成岩中のHornblende-Cummingtonite系角閃石の昌出経路とHornblendeと固溶体 : 深成岩および変成岩
- 輝石-角閃石間の固溶体形成の可能性 : 深成岩および変成岩
- 領家帯三都橋花崗岩類中の角閃石の母相と離溶相 : 深成岩および変成岩
- 領家帯・三都橋花崗岩類中の角閃石の化学組成と離溶組織(その2) : 深成岩および変成岩
- 高山貫入複合岩体の石英はんれい岩中の輝石の累帯構造と結晶作用の経路
- 「鉱物を楽しむ」ことのすすめ
- 領家帯生田花崗岩 : 三都橋花崗岩中の角閃石の化学組成と離溶組織 : 深成岩および変成岩
- カルシウムに富む単斜輝石の裂開と離溶組織の関係 : 深成岩および変成岩
- 高山はんれい岩中の輝石とその離溶現象
- 幌満産カンラン石はんれい岩中のトウ輝石の離溶ラメラ
- 幌満超塩基性岩体中の輝石の構成格子について