有限要素法によるミグマタイトドームの数値解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
現在の地質学によると,花崗岩質岩体の上昇運動は周囲岩体との密度の差による事がひとつの原因である,と考えられている.この小論は,密度の差による花崗岩質岩体の浮上中の応力場の変遷を論じたものである.この目的のため,すでに木崎(1956,1972)によって詳細な構造解析の行なわれている,日高変成帯最南端部「音調津ミグマタイトドーム」をフィールドとして選んだ.木崎によって得られた構造解析データをすべて考慮することは,現在では不可能であるため,つぎの単純化を行なった.1)岩石種は二種(菫青石ミグマタイト,塊状ホルンフェルス)とする.2)それらは完全弾性体である.3)重力のみを仮定した平面歪状態(音調津山地山頂を含むNE-SW方向の垂直断面内において)と考える.本解析は次の五つの場合を仮定し,それぞれについて行なわれた.ドームが,地表下10.5~14.5km(この場合地表は平坦であるとする),5.5~9.5km(同様),2.5~6.5km(地表は山型に盛り上がっているとする)等の深さにある場合,更にドームが地表へ露出した場合,そして削剥された場合(現在)の以上五段階である.このような仮定のもとに解析した結果,つぎの結論を得た.1)主応力は全段階を通じ,かつ解析領域全般にわたってすべて圧縮性である.2)ドーム内部の主応力値はドーム外部のそれの約半分である.3)すべての主応力の絶対値は加熱―三軸圧縮実験によって決定された弾性領域の範囲内にある.4)主応力の方向は全段階を通じてほぼ一定している.5)フォリエーション面に働く合応力の方向はほとんどその面に垂直である,すなわち合応力はほとんどフォリエーションに対して垂直応力成分からなっている.
- 日本地質学会の論文
- 1972-12-15
著者
-
木崎 甲子郎
琉球大・理
-
林 大五郎
琉球大学・理
-
林 大五郎
Department of Marine Sciences,University of the Ryukyus
-
木崎 甲子郎
Department of Geology and Mineralogy,Hokkaido University
-
林 大五郎
Department Of Marine Sciences University Of The Ryukyus
関連論文
- O-155 インドとユーラシアの衝突によるチベット高原形成のFEシミュレーション(19.テクトニクス,口頭発表,一般講演)
- 西ネパールの地質とナップ構造 : 構造地質
- P-107 NWヒマラヤのネオテクトニクスとその地震学的意味 : 2次元FEMからの推察(14.テクトニクス,口頭およびポスター発表,一般講演)
- O-162 ヒマラヤにおけるスラスト形成のFEMシミュレーション(15.テクトニクス,口頭発表,一般講演)
- O-122 日高衝突帯西部の馬追丘陵の弾塑性変形(14.テクトニクス,口頭およびポスター発表,一般講演)
- O-121 南海トラフ北方付加体のsplay faultの発達 : 数値シミュレーションによるアプローチ(14.テクトニクス,口頭およびポスター発表,一般講演)
- 南海トラフ北方における断層発達 : 有限要素法によるアプローチ(16.テクトニクス)
- 伊豆衝突帯の左横ずれ断層の発生と影響(16.テクトニクス)
- 日高衝突帯西部の馬追丘陵の弾塑性変形(3.アナログ実験と数値実験で探る地形・地層の形成メカニズム)
- P-164 伊豆衝突帯における地殻物性値の検討(19. テクトニクス)
- O-151 中央ネパールヒマラヤThakkhola half grabenのFEMによる断層解析(19. テクトニクス)
- P-119 付加体応力場に与えるデコルマ面と地表面の傾斜の影響
- O-252 琉球弧における小断層解析
- O-246 紅海リフトシステムの FEM による応力解析
- P-132 ノンコアクシャル場での歪解析の精度 (その2)
- 145 パッシブマーカーを用いた歪解析法の精度に影響する因子
- 341 3次元歪解析法の精度(構造地質)
- 地質構造解析における歪楕円体の適合度C値の提唱
- 268. 直交する面上の歪楕円を用いる3次元歪解析法の実用上の有効性
- 274. 3次元歪解析における適合度c値
- 非平行断面上の歪楕円を用いた3次元歪解析法
- 262. 沖縄島天仁屋崎周辺に分布する嘉陽層の歪解析
- 変形前のマーカー楕円の性質:沖縄島国頭層群嘉陽層の場合
- 203 復元された変形前のマーカー楕円の性質
- 377 地質ルートマップデータのデータベース化
- 226 ネパール、アンナプルナ周辺の歪解析
- 「3次元有限歪解析─沖縄島国頭層群嘉陽層について─林,1988」における誤りとその訂正
- 308 ネパールヒマラヤジオトラバース,1988の成果
- 3次元有限歪解析:沖縄島国頭層群嘉陽層について
- 388 東部ネパール、ヒマラヤに分布するAugen gneissを用いた歪解析
- 384 沖縄島、国頭層群嘉陽層の歪み解析
- チベット高原隆起の数値シミュレーション
- Geological reconnaissance around Silgarhi-Doti, West Central Nepal
- 中央ネパール・ボカラ〜ピウタン地域の地質構造とその造構的意義 : 構造地質
- 沖縄島北部,四万十帯の再検討 : 中生代
- Variations of Field of Viscous Stress around Diapir Calculated by the Finite Element Method
- 超塩基性および塩基性岩体の「しぼり出し上昇」の数値実験
- Finite Element Formulation of a Linear Viscoelastic Material
- FINITE ELEMENT FORMULATION OF VISCOUS FLUID BASED ON A VARIATIONAL PRINCIPLE
- 西ネパールの地質構造 : 構造地質
- 琉球石灰岩の年代測定
- 琉球列島・八重島変成岩類の地質構造 : 変成岩
- 琉球石灰岩と沖縄社会(資料)
- 292 芦別市新城町付近の神居古潭変成岩類のメソスコピックな構造について
- ネパール・ヒマラヤの地殻変動
- ネパール国中央部のシワリク層 (予報) : 第三紀
- 東南極地質構造発達史 : 深成岩および変成岩
- 中古生界基盤の問題(総括) : 琉球列島の地史
- 日高変成帯のミグマタイトテクトニクス : 深成岩および変成岩
- 南西諸島石垣島の緑色片岩類の構造(予報) : 深成岩・変成岩
- 有限要素法によるミグマタイトドームの数値解析
- 花崗岩質岩の浮きあがりに関して(その2) : 構造地質
- 花崗岩質岩の浮きあがりに関して : 構造地質
- 花崗岩質岩の浮きあがり,非圧縮性Newton流体とみなして
- P-149 中琉球に分布する島尻層群における小断層解析(21. テクトニクス(液晶有),ポスター発表,一般講演)
- O-272 ヒマラヤで期待される断層のFEMシミュレーション(21. テクトニクス(液晶有),口頭発表,一般講演)
- O-266 南琉球弧におけるforearc sliverの再検討(21. テクトニクス(液晶有),口頭発表,一般講演)
- P-152 南琉球宮古島の中新統〜更新統堆積物中に見られる小断層と造構応力場の変遷(21. テクトニクス,ポスターセッション,一般発表)
- O-200 enhanced normalized Fry法による歪解析(19. 岩石・鉱物の破壊と変形,口頭発表,一般発表)