ヒト下顎第一小臼歯根面裂溝に関する形態学的研究
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概要
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下顎第一小臼歯の歯根は原則的に単根だが, その歯根面にさまざまな根面溝が出現することが知られている.特に, 近心舌側根面裂溝は出現頻度が高いとされ, 形質人類学の分野では『Tomes' abnormal root』と呼ばれている.今回, 日本人の抜去歯牙1157歯とオーストラリア白人の抜去歯牙1611歯を用い, 近心舌側根面裂溝の出現頻度や人種間の差などについて検討した.近心舌側根面裂溝の出現頻度については, Arizona State University dental anthropology systemを構成するLP1 Root Form classificationを使用し, オーストラリア白人歯牙(5.71%)に比較して, 日本人歯牙(7.69%)は有意に高い値を示した(p<0.05).近心舌側根面裂溝に伴う頬舌方向の根尖分岐の出現頻度については, 奥村の分類を使用し, オーストラリア白人歯牙(6.08%)に比較して, 日本歯牙(11.50%)は有意に高い値を示した(p<0.001).近遠心型の完全な2根歯を1歯, 頬舌型の完全な2根歯を4歯, それぞれ認めた.近遠心型の根尖分岐や2根歯は, 近心面舌側根面裂溝の存在が単根歯と2根歯の中間に位置する連続形態とする説に符合した先祖返りであり, 頬舌型の根尖分岐や2根歯は, 歯根形成過程における一種の奇形であって, 何らかの因子による二次的な形質獲得と捉えることが妥当と思われる.以上のことから, 日本人はオーストラリア白人の場合よりも, 高い頻度で下顎第一小臼歯に近心舌側根面裂溝やそれに伴う頬舌的な根尖分岐形態を発現することが示された.これは, 形質人類学の分野において, 人種を識別する歯牙形質の一つとして, 下顎第一小臼歯の近心舌側根面裂溝が有用である可能性を示唆している.また, 今回の結果をふまえ, LP1 root form classificationと奥村の分類の長所を兼ね備えたThe LP-MLRG classificationを作製した.
- 九州歯科学会の論文
- 1995-02-25
著者
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