咀嚼時における下顎運動と筋電図の同時記録の分析の自動化について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は補綴臨床診断学に運動の巧みさの検索方法を導入することを目的として行なった.運動の巧みさを示す度数としてフォーム, リズム, 速度をとりあげた.咀嚼時の下顎の運動と筋活動の同時記録を行い, 両者の時系列データの検出, 生データの修正, 分析, 統計処理, 図形処理を電算機システムを用いて多数の症例を自動的に迅速に行う方法を考究した.3次元咀嚼路, 運動速度, 運動様相, 筋活動量, 筋活動様式を検索するコンピュータプログラムは臨床応用が十分可能である.得られた結果は次の通りである.1. MKGの出力歪の修正は3元4次関数により行った.修正後の結果は左右16mm, 前後14mm, 上下18mmの立体範囲内で, 左右的は2.0%, 前後的に2.7%, 垂直的に1.9%の誤差であった.2. 上記の範囲内での本システムの基準精度は, 分解能と計算誤差および測定誤差を複合した結果, 0.1mmであった.3. 運動路修正プログラムは離散型データばかりでなく, 任意のサイクルの連続型データの修正にも十分適応できる.4. 速度は各軸の変位量を時間で図上微分することにより求め, 3軸速度の合成により立体運動速度を求めた.5. プログラムにより咀嚼運動の開始点, 終末点を自動的に決定することが可能となった.運動開始点を下顎の咀嚼運動路と筋活動データの共通のtriggerとした.6. 30サイクル程度の咀嚼が行われる時間までは十分分析可能であり, それ以下の任意のサイクル数の分析時間を選択できる.7. 筋電図データの平滑化は移動平均法を用いて行った.8. 1サイクル内の咀嚼運動の活動期, 休止期, 最大開口位に到達する時間, 筋活動放電の持続期と休止期を, 設定した判定条件により判別し, 運動様相の分析を実行する.統計量としてそれぞれの平均値, 不偏分散, 平均変化量を出力する.このプログラムによりリズムの一定性の分析が可能となった.9. 運動経路, 速度, EMGの振幅をサイクルの平均時間で基準化し, サンプリングタイムごとの平均値, 分散, 共分散, 確率限界を決定することにより, 咀嚼時の運動経路, 速活動の一定性の分析が可能となった.10. 以上の出力のプリントアウトを行うと同時に, 視覚的に訴えやすくするため図形処理を行った.
- 九州歯科学会の論文
- 1982-12-25
著者
関連論文
- 咀嚼時における下顎運動と筋電図の同時記録の分析の自動化について
- 荷重下における支台歯およびその支持組織の応力分布について (2次元光弾性実験) : 第2報 ブリッジ
- 荷重下における歯牙および支持組織の応力分布について : 第1報 二次元光弾性実験