歯科用アマルガムの経時変化
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概要
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アマルガムは今日の歯科臨床において最も使用されている修復材料の1つである反面, 2次ウ蝕の発生率が非常に高い材料でもある.その原因については, 術者に基づくものと材料自体によるものがあると言われている.そこで著者は6ヵ月間にわたり, 種々の環境下における各種物性の挙動を測定し, アマルガムにおよぼす環境の影響を検討した.実験にはLuna Alloy(従来型, 削片状), Hi Atomic M(従来型, 球状), Dispersalloy(高銅型, 分散型), Dialloy(高銅型, 単一型)を使用した.試料の保存環境は37℃大気, 蒸溜水, 生理食塩水, 4℃, 37℃, 60℃の人工唾液, 4℃と60℃の人工唾液中でのサーマルサイクリングとした.またくりかえし荷重の影響を調べるために37℃人工唾液中で2.5kg/cm^2のくりかえし圧縮荷重を加えた.試料作成後1週間, 1ヵ月, 3ヵ月, 6ヵ月にダイアメトラル引張り強さ, ヌープ硬さ, 静的クリープの各試験をおこなった.その結果, 高銅型は従来型とは異なった傾向を示した.すなわち, ダイアメトラル法での引張り試験では, 6ヵ月間にわたり高銅型アマルガムの強さが増加したのに対し, 従来型アマルガムでは有意な変化が認められなかった.また温度を37℃に保つ限り, 両アマルガムも共に溶液の影響間に差はなかった.また人工唾液の温度が高いほど従来型アマルガムでは強さが減少するのに対し, 高銅型アマルガムでは逆に強さが増加した.なかでも, Lun Alloyを60℃に保存した場合の強さの低下は著しかった.また保存中試料にくりかし圧縮荷重を与えた場合, 強さの変化は60℃で保管した場合と同じ傾向を示した.保存中にくりかえし荷重を加えた試料は60℃に保存した場合と同様の組織変化を起していることから, くりかえし荷重はアマルガムを疲労させる効果と同時に, 残留未反応合金と残留水銀との反応を促進する効果をもつものと考えられる.クリープ値も従来型と高銅型とでは異なる傾向が認められた.従来型アマルガムにおいては, クリープ値は経時的にわずかな変動を示すにすぎないか, あるいは増加の傾向がみられた.これに対し高銅型では, 時間経過, 高温, くりかえし荷重の各影響によりクリープ値の低下が認められた.ヌープ硬さにも保存条件により多少の影響が見られたが, 引張り強さやクリープ値の変化とは相関関係が認められなかった.
- 九州歯科学会の論文
- 1980-01-25
著者
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